社交が苦手なリーダー!?「らしい」メディア作りのために心掛けていることとは。『オズマガジン』編集長×「北欧、暮らしの道具店」店長対談 前編

書き手 編集スタッフ 馬居

写真 小倉亜沙子

社交が苦手なリーダー!?「らしい」メディア作りのために心掛けていることとは。『オズマガジン』編集長×「北欧、暮らしの道具店」店長対談 前編
昨年、「北欧、暮らしの道具店」店長佐藤がいただいた一通の手紙。それは、数日前に受けた取材のお礼が書かれた、『オズマガジン』(スターツ出版)古川編集長からのお手紙でした。

「そういえば、メールのやり取りもとてもご丁寧で素敵だったんです」と、取材のやり取りをしていた広報スタッフの話を聞き、更に感動した店長佐藤。古川さんは、どんな気遣いの方なんだろう、一度ゆっくりお話をお聞きしたい、そんな思いで今回の対談が実現されました。

テーマは、ずばり「仕事のお付き合い」。同僚、部下、上司、そして、取引先、お客様…どんな仕事にも共通して最も大切な”コミュニケーション“について、古川誠さんとお話をしてみました。

前編は、同じ職場で働く方々とのお付き合い、後編は取引先、そしてお客様である読者の方々とのお付き合いについてまとめております。

『オズマガジン』編集長

古川誠

1998年スターツ出版入社。2002年より『オズマガジン』編集部在籍、2008年より『オズマガジン』編集長、2009年より『オズマガジン TRAVEL』(現オズマガジンTRIP)編集長兼任。

編集長からの言葉に込められたスタッフへの想い

−−−まずは、同僚の方々とのお付き合いについてお聞きしたいのですが、古川さんにとっては、編集部の方たちになると思います。まず前提として、古川さんが統括されている『オズマガジン』編集部の人数構成を教えて下さい。

古川
『オズマガジン』のなかには、『オズマガジン』本誌と、『オズマガジンPLUS』『オズマガジンTRIP』そして、クリエイティブチームと大きく4つのチームがあります。僕は、そのすべての統括編集長をさせていただいています。

人数としては、本誌には副編集長が1人いて、編集部員が5人。『オズマガジンPLUS』は編集部員が1人、『オズマガジンTRIP』とクリエイティブチームは2人ずつ。そして、全体の進行担当が1名で、僕を除くと12名ですね。

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佐藤
3誌+αなんですね。全員女性ですか。

古川
本誌の副編集長は男性です。髭のオシャレ男子です。ただ、みなさんが想像するオシャレ髭男子ではなくて無骨な、「自分不器用なんで」みたいなタイプな人で、とても優しい男性です。彼と僕以外は全員女性ですね。20代から40代まで、上も下も居るという感じです。

佐藤
「北欧、暮らしの道具店」の編集チームは、30歳前後で年齢層としてはぎゅっと固まっていますが、11名なので、規模は同じくらいですね。

『オズマガジン』の編集部の方は、長く続けている方が多いとお聞きしています。

古川
そうですね。離職率は低いと思います。僕が入社したときからいらっしゃる先輩も多いです。

佐藤
それだけ居心地がよいのですね。

古川
みんなに改めて聞いたことはないですけど、そうだと良いなとは思います。編集部のみんなが居心地良く働ける雰囲気作りをすることが、僕の大事な仕事かなと思っているので。

前回、佐藤さんに取材させていただいた時に、初めて「北欧、暮らしの道具店」のスタッフさんにお会いして受けた印象は、「ボーダーが多いな」ってことですね(笑)

佐藤
それ、すごく言われるので、最近着ないようにしているんですけど、あの日は、写真に映るとは思ってなかったので、みんな着てきちゃって…。

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古川
ええ。3分の1くらいボーダーで。でも、そういうこと、大事だなと思いますよ。期待通りだなと思いました。

佐藤
あー、違う面をみせたかった…。

古川
いえいえ、サイト上で受ける印象と同じで良い雰囲気だなと思いました。僕らも、「北欧、暮らしの道具店」のように、リアリティを持って編集部の雰囲気を伝えたいと思っているので、いつも勉強させてもらっています。

佐藤
こちらこそ、愛読しております。特に、『オズマガジン』巻頭に毎号ある古川さんの編集長からの言葉が大好きで。

あのページに、すごくエモーションを感じるんですよ。これだけの魂を持った方が、編集長なわけだから、書き方はこうじゃないとか、写真のテイストが『オズマガジン』の読者からずれてるとか、ぐいぐい編集長が引っ張って作ってらっしゃるのかなと思っていたのですが。

実際は編集部の方とはどんなお付き合いをされているのですか。

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毎号テーマに合わせた編集長から読者の方への言葉で始まります。

古川
あのページをみて、僕がルールや決まり事をギチギチで厳しくやってるんじゃないかなとか、よく言われるんですよね。だからブランドが守られているんでしょうと評価いただたりも。でも、内実は全然違って。

僕自身が気をつけているのは、編集部がイライラしたムードにならないように、みんなが働きやすい雰囲気を壊さないようにしているくらいで。あとは、自由にやってもらっています。僕が書いているのは、あのページくらいですしね。

そして、実は、編集長の言葉のページは、一度辞めたことが有りまして。

雑誌を開いて最初のページですから、例えば、広告の文脈で考えたらいちばん価値が高いところを、あんなことに割いているのは、うちの雑誌くらいだと思うんです。

そう思ったら、5年前の25周年の時に、急に恥ずかしくなっちゃって。自分でここまで語ったら、それは野暮だよねって。それで、1年間書くのを辞めたんですよ。

佐藤
そんな時期があったんですね。

古川
はい。そうしたら、読者の方や、広告主の方からまで、なんであれを辞めたんですかと、すごく言っていただいて。その時に改めて、あのページをみなさんが読んでくださっていたことに気づいたんです。

それで、あのページの意味を考えてみまして…。それまでは、『オズマガジン』に自分の色が出過ぎるのはどうなのかなと思っていたんですよね。でも、みなさんの反応を受けて、編集長を預かっている間は、自分の言葉で、ちゃんとした色を出していかないといけないのかなと。そのためにあのページはやっぱり必要なのかもしれないと思いました。

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そして、なにより、編集部員のみんなが作ってくれた記事が伝えたいことを最大化させるために、入り口であるあのページで、今回の号で何を伝えたいかということを、最初に宣言するべきだろうと思いました。

あの原稿は、みんなのページができあがって、それに全部目を通してから一番最後に書くようにしているので、編集部みんなが一生懸命作ってくれたものに、熨斗をつけるような感じで。

そんな思いで、26年目から新しい気持ちでまた再開しました。

佐藤
読者の方々への言葉でもあり、編集部の方への言葉でもあるんですね。

古川
そうですね。仲間への言葉という意味はとても大きいかもしれないですね。

ただ一生懸命頑張ればいいんだと信じられる環境づくり

古川
とにかく僕は、本当にあのページを書くだけで、あとはもうみんなに任せているんです。

佐藤
細かい指摘はされないのですね。

古川
しませんね。『オズマガジン』本誌でいうと、副編集長が全体の方向性やフォーマットを全部決めて、中身に関しても、細かいことは彼を信用して任せています。

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編集部員の手の動かし方はそれぞれの癖があって。じっくりやる子もいれば、テキパキやる子もいるし。そういうところは、それぞれに任せるということを大前提にしています。

ただ、一つだけ、「僕らは手持ちのカードでやる」ということはいつも言っているんですね。12人がそれぞれ12枚のカードの実力以上のものはできないし、このカードでできたものが今の『オズマガジン』だということを刷り込むように言っています。

実力以上のことはできないし、実力以下のものができてしまったのであれば、なぜ力を出しきれなかったのかを考えればよいのであって。みんながベストを尽くしたのであれば、それが今の『オズマガジン』のベストだという精神は共有するようにしています。

そうすることで、自分たちが一生懸命がんばったものが『オズマガジン』だと、卑下もしないし、誇大もしないしで、ただ、まっすぐに取り組めるようにと思っています。

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そういった、どういう雑誌を作りたいかという気持ちだけを伝えて、あとの細かいところは、各自に任せています。

「流れ」を守っていくことが使命だと気づいてから

佐藤
古川さんは私と同い年ですよね。編集長歴が9年とのことなので、就任されたのはまだ32歳とかですよね。

私も31歳のときに兄と「北欧、暮らしの道具店」を始めたので、同じくらいのときかなと思います。でも、私は、恥ずかしながら部下とか後輩というものを持つ経験がなく起業をしてしまって、マネージメントのマの字もわかっていないような状況で人を雇うという状況になってしまって。

そういう中で、スタッフと接する時に、自分も若いものですから、年上のスタッフへの接し方や、若い人たちとの距離感に悩んでしまった時期があったんですね。

古川さんも、9年間紆余曲折あって、今の心境に行き着いておられるのかなと思うんですけど、ここまではどういった経緯でたどり着いたんですか。

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古川
たしかにそうですね。力が抜けた感じがしたのは、この2年間くらいでしょうか。

9年前に編集長になった時は、『オズマガジン』は月に2回発行で、つまり広告も月に2回入れるという相当タフな状況で。そのときは、離職率も高かったんですよね。

月に1回発行になった頃も、インターネットが普及して、情報がどんどん無料になっている時代だったので、情報以外のものをどう雑誌に込めるかということを一生懸命考えないといけない、いわば改めてブランドを作らないといけない段階だったんです。

自分がブランドを作らなければ、『オズマガジン』ができていかないという、今思えば、思い上がりのような気持ちがすごく強かったです。今よりずっと力が入っていて、会社ともよく衝突していました。

でも、編集長になって、5年位経って、周りからこれって『オズマガジン』ぽいね、という風にいってもらえるようになって。少し気が抜けたところで、ああ、僕の役割は『オズマガジン』をつくるのではなく、『オズマガジン』という30年も続いてきた「流れ」を淀ませないことなんだなということを意識するようになりました。そう考えると、僕が考えていたことは、傲慢だったなと。それで一気に力が抜けましたね。

それからは、自分がイライラしないようにですとか、編集部の雰囲気を良くすることや、外部との調整やリスクの回避だったりをして、ただみんなが一生懸命、そして楽しく雑誌を作れるようにということが一番の仕事だと思って働いています。

私はこう思う、ではなく、あなたはどう思う?に変えてみた

古川
佐藤さんは、どんどん入って指示をしていかれるのですか。

佐藤
そうだったんですけど…。古川さんは、ここ2年くらいで肩の力が抜けたとおっしゃってましたけど、私はここ2ヶ月位でやっと抜けてきたかもしれません。

古川
最近じゃないですか。

佐藤
今年からかよって感じですよね。

前回、『リンネル』の西山編集長と対談した時は、私は色々口を出してしまってしょうがないという反省話をしていたのですが、たぶん、あの対談も一つの良いインプットになって、やっと「任せる」ということがわかってきたといいますか。

私は、いつでも自分の意見を言わないと気がすまなかったんですよね。それもある種の責任感からなんですが、質問しに来てもらった時に、自分が答えを持っていないことは恥だとずっと思っていたんですよ。それを恥ずかしいことじゃないということに、やっとこの歳で気がついて。

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それから、「私はこう思う」じゃなくて、「あなたはどう思う?」と意識して聞くようにしたんです。それをプレイ的に自分に課してやってみたら、うまくいくことが多かったんですよね。これまで一生懸命、「私はこう思う」と言わなきゃと思っていたのは何だったんだろうってくらい。

「どう思う?」と聞かれれば、きっと相手も自分が尊重されているように感じるし、私がその人を大切にしているというメッセージにもなるし、思いもよらないアイデアを出してくれることもあって。自分が考えることよりもずっと良いことがあるじゃないかと。

古川
そうそう。そうなんですよね。

僕も、最初はデザインも写真の撮り方ひとつも、かなりこだわっていて。

でも、「オズっぽい」というのがなんとなくできてからは、ガチガチでレギュレーションを決めていくよりも、「オズっぽい」をみんながぼんやり持っているくらいのほうが、面白いということに気づきました。

佐藤
本当にそのとおりですね。

飲み会は、みんなが行くのを見送るタイプの編集長です

佐藤
『オズマガジン』のみなさんは、コミュニケーションを取るためによく飲みに行かれたりもするんですか。

古川
他の部署はあるようですが…、僕らの部署はあまりないかもしれません。というのも、僕、飲みに行こうって人を誘うのがすごく苦手で。社交的に見られがちなんですけど、二次会の前にいつのまにかササッと帰る人っているじゃないですか。僕あれなんですよ。

佐藤
帰っちゃうんですね(笑)

古川
今日行こうよ!っていうのも苦手ですし、実は、言われるのも苦手だったりしますね…。

副編集長はそういうことを時々してくれて、行こうよ!と言ってくれるので、おお!行っておいでよ!と送り出しますよ。

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佐藤
送り出しちゃうんですね(笑)

古川
はい…。まぁ、節目節目で良いことがあったりとか、半期に一回とかはもちろん行きますけどね。

佐藤
うちも昔はそういう感じだったんですけど、同世代の女性が増えてからは「ねえ、帰り、どう?」みたいなことは増えてきましたよ。

古川
あー、いいですよね。その光景を見ているのはすごく好きなんです。みんなが、飲みに行こうとはやく帰っているのを見ると、ほっとして、帰れ帰れ!って。

佐藤
それは嬉しいんですね。

古川
すっごく嬉しいです。みんな真面目だから、一つ一つのページにすごく時間を割くんですね。だから、だいたいみんな遅くまで残ってがんばっていることも多くて、はやく帰れよーって思うので。

佐藤
なんと微笑ましい。

古川
手前味噌ですけど、オズは本当にすごい熱量で作られている雑誌だと思います。それは良いことですが、毎晩となると…。ですから、たまに19時とかでささっとあがっているのをみると、ほっとしますね。

どんどん行ってもらいたいので、他の部署に、『オズマガジン』編集部は忙しいから誘いづらいと思われないように、うちに部署の子を飲みに誘ってねと頼んでるんですよね。そういう手回しはしてます。自分は行きませんけど。

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佐藤
やっぱり自分は行かないんですね(笑)

編集長失格!?実は新しい情報をシャットアウトしてます

佐藤
でも、少しわかります。私、視力が低いほうなんですけど、普段は裸眼で過ごしているんですね。というのも、街を歩いているときに様々な情報が目に飛び込んできすぎることに疲れてしまうことがあったりもして。

古川
あー、それは僕と話が合いそうな気がします。

佐藤
だから、映画とテレビとパソコンをみるときだけメガネをかけるんです。あとは、家でも外でも眉間に皺寄せて歩いています。

それぐらいに「キャッチマン」なんです。色々キャッチして、感じて、傷ついてしまうんですよ。だから、人数多めの飲み会って本当はなかなか苦手です。

古川
すごくわかります。僕が飲み会に行かないのも、たぶんキャッチマンだからです。

会社は180人くらいいるので、会社の飲み会といってもそんなによく知らない人ももちろんいますし。編集長ということで、人生経験があると思われていたりして、相談されたりもするじゃないですか。

でも、他人の感情を拾ってしまいがちなので、そういう新しい出会いや新しい会話は刺激が強すぎて。相手の期待に答えられないことも多いですし。だったら、最初から行かなければ、何も変わらないし誰も傷つかないかなあと。

なんというか、首を突っ込まないようにしているという言い方が一番正しい気がします。新しいことに対する臆病さみたいなものは、たぶん人一倍ありますね。社会性が足りないと思われるかもしれないんですけど…。

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映画もあまりに見に行かないんです。感動したり、落ち込んだりするから。映画と本なら、迷わず本を選びますね。そうやって、あまり新しいグラグラを自分に入れられないようにしています。その行動によって、自分が狭まっているとか、価値観が広がらないという可能性はだいぶあると思うんですけど。

これ、編集者としてだいじょうぶですかね。

佐藤
お互いやばいですね。

古川
そういう意味ではアンテナは低いかもしれないですね。

佐藤
そのくらいセルフコントロールしないと、ほんとに疲れちゃうんですよ。ぐったりしちゃうことが多いし、そうやって感じちゃうから、誰かを元気にするコンテンツを作りたいと本当に芯から思えるところはありますけど。

でも、今年に入ってちょっと力が抜けたのは、私には、そのキャッチマンな機能だけ残ればいいやと思ったんですよね。最近うちのサイト、ちょっと違うかもとか、本当にこの件はこれでいいんだろうか?という違和感のようなものは、一番に感じられるようでありたいと思いますね。

例えば、子供関係の行事に行くと、自分も含めてですけど色々なお母さんがいて、その場にいて、もう、本当にたくさんのことを感じるんです。そこから、育児中のお母さんに向けたコンテンツの企画が湧いてきたりすることもあるんです。

古川さんともゆっくりご飯食べたいですけど、キャッチマン同士なので、やめたほうがいいかもですね(笑)

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古川
わかります。ちょっとこういうオフィシャル感があったほうがいいですね、僕らは。

佐藤
たぶん、苦手なことをしてもうまくいかないってことですよね。うちは、兄である代表の青木が、対外的なコミュニケーションは引き取ってくれるので助かってはいますけど。

古川
良い関係ですよね。僕は、小学校から大学まで野球部のキャプテンで外では活溌だったんですけど、家ではその反動が出るからか、ずっと一人でプラモデルを作っているような子で。姉がいるんですけど、姉は、僕が何を考えているかわからないと困惑していたようです。

僕は姉がすごい好きなので、佐藤さんのところみたいに姉と2人で起業したら、どうなってたかななんて考えてしまいました。

 

後編は、両者にとってお客様である読者の方々とのお付き合い、そして、外部の方とのお付き合いについて語っております。ぜひご覧ください。
「後編:生きていくのは大変だから、誰も傷つかない発信をしたい。

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