クラシコムのひと

どんなことでダメ出しされる?会社のNGラインから導き出す「らしい」働き方。

書き手 編集スタッフ 馬居

写真 小倉亜沙子

どんなことでダメ出しされる?会社のNGラインから導き出す「らしい」働き方。
「みんな、仕事でどんなダメ出しされてるの?」

これまでクラシコムの様々な働きっぷりをお届けしてまいりましたが、今回はいつもとは逆の視点からアプローチをしてみることにしました。

つまりはクラシコムらしくないこと、「やらないでほしい」と宣言されしていたり、何となくみんなが気をつけていること。それらを知ることにより、自分たち「らしさ」が見えてくるのでは、という仮説の検証です。

まず入社してから、ダメ出しをされたり指導された事、もしくは言わずもがなのNGラインについての社内アンケートをとった後、回答者の中の3人と座談会をしました。



左から順に…

【デザイナー 鈴木】 33歳。前職は広告制作会社のグラフィックデザイナー。夫とふたり暮らし。休日はピアノ演奏で気分転換。

【編集スタッフ 奥村】 28歳。前職はライフスタイル誌の編集。焼き菓子を作らせたらクラシコムいち。

【広告プランナー 高松】 35歳。前職は広告代理店のプランナー。美味しいお店探しが大好き。

職種が違えど3人の共通点は、入社して「3年目」ということ。前職での記憶も鮮明に残りつつ、そろそろ会社を作る当事者という意識も芽生え後輩を育てる立場にもなってきた、そんな3人が実感するNG!なあれこれ。

なぜダメなのだろう?それはどの部署も共通してのこと?私たちは何を目指しているんだろう?と、日々の当たり前をひっくり返して自分たちの働き方を深掘りしてみました。

うまくいかないことは、やらない!

──まずは、デザイナーの鈴木さんからみたクラシコムの「NG」ってどんなものがありますか?

鈴木
クラシコムで働く上でNGを出されることってとても少ないのですが…一つ言うなら「うまくいかないことはやらない」ということでしょうか。

例えばオリジナル商品を作る過程だと、お金をかけて何度もサンプルを作ったにも関わらず、無理なものをこねくりまわすくらいならスパッと諦めましょうとなることもあって。

──作りかけたものが世に出せなかったら悔しくはありませんか。

鈴木
もちろん出したいという気持ちはあります。最初は、「せっかくここまできたのに、やめてしまうの?」って驚きました(笑)。

でも、もっとすんなり作れる商品があるんじゃない?という思考になるんです。行き詰まるのには企画自体に根本的な問題があるのかもしれないから、全く別のことも考えてみよう、と。

商品開発だけではなく、事業でも小さな施策でも、誰かが無理をして実現させたことは続かない。流れに逆らって推し進めるのではなく、自然とうまくいくことを探してそれを続けよう、という考え方をするんですよね。

奥村
編集の仕事でも、潔い切り替えは必要ですね。

この前、どうしてもこの方に話を聞きたい!と、自分が思い入れをもって企画した特集記事で、取材オファーを断られてしまったんです。その方に時間を取ってもらえるタイミングまで待つという選択肢もあるかもしれないけれど、今回は記事の公開日を守るために、別の方へお願いすることになりました。

正直、粘りたかった気持ちがないわけではありません。でも、その方の出演にこだわりたいのは、私がその記事を自分の「作品」として完璧にしたいと考えているからなんですよね。実際、お客さまはほかの方の取材記事だったとしても、きちんとつくることができれば、きっと楽しんでくださる。

私たちが大切にすべきなのは、お客さまに喜んでもらえるコンテンツを作り続けることで、私の作品を作ることじゃない。そう考えるようになってから、少しずつ切り替えられるようになりました。

そして、引きずっていたら18時に終わらないという次の試練が(笑)。

どうして定時で帰らないといけないの?

──クラシコムは、18時定時で原則残業なしですもんね。アンケートでも、スケジュール厳守!という答えが多かったです。なぜクラシコムはそこまで時間にこだわるのでしょうか。奥村さんはどう思いますか?

奥村
私が思うのは、おしりを決めないと良いものってできないのかも、ということです。

自分の脳みそが考え続けられる時間は決まっていて。無限に時間が与えられると、何度もリトライして、結果疲れて何も考えられなくなってしまいますが、期限が決まっていると「良いもの」というか、「納得いくもの」ができるということが実感としてわかってきました。

締め切りがあるからこそ、成果が出せるというか。

あと編集グループの中では、決められた時間内に作れることが美しい、という話はよくします。

──美しい?

奥村
過剰に時間をかけたということは自慢にならないんです。たとえ最初に思い描いた8割の出来だったとしても、決められたスケジュール内で、誰にも迷惑をかけず、お客さまも喜んでくださる記事になって、それをずっと繰り返していくことが美しい、みたいな価値観はあります。

──たしかに、それが一番美しいかもしれません…!鈴木さんは、スケジュールや時間に関してはどう思いますか?

鈴木
私はそもそも「制限がある中でも良いものはつくれる」ということを実行したいなと思って転職してきたんですよね。

──お、といいますと?

鈴木
私の前職は広告制作の会社だったんですが、「仕事には納得いくまで時間をかける」という働き方をしていました。残業してプライベートな時間がなかったとしても、良いものを作りたいという気持ちの方が強かったんです。

でも、次第に疑問が湧いてきて。これからのライフイベントを想像すると、この生活はいつまで続けられるんだろうって。もっとプライベートな時間を確保できる働き方に変えたいと思いました。

デザイナーって、自分の全てを捧げてクオリティを突き詰めるイメージがあったから、そうできない自分に対して「私の仕事への熱量ってその程度だったのか」と悔しい気持ちにもなりました。

だけど早く帰ることって本当にクオリティを諦めることとイコールなのかな?と思ったんです。クラシコムに転職をしたのは、諦めたからじゃない。諦めたくないから転職したんだという思いでした。

だから時間内に仕事を終わらせるというのは、会社の方針だからというよりも、自分がそうしたいからなんですよね。

奥村
時間をたくさんかけたい人の気持ち、私もすごくわかります。もし、環境が変わったらまたそういう仕事の仕方に変わる気もします。

鈴木
そう、いつまでもやりたくなっちゃう。だって仕事は楽しいから。でもそれでは続けられないんですよね。

本当に無理しなくていいの?

──同じ「時間を守る」といっても、みんなそれぞれ思いはありそうですね。でも、毎日定時で帰るというのもなかなか大変なことかと思います。

奥村
そうですね。特に私は前職、出版社で月刊誌の担当で、いつも毎月の期日に間に合えばいいという考え方で働いていました。1日の中でどういう仕事をしていくのかという細かい計画なんてほとんど立てたことがなくて。

社会人経験も浅いうちに転職したので、実力がなかったこともあるとは思うのですが、クラシコムに入社してからはとにかく時間が足りなくて、最初の1年ほどで3回くらいパンクしました。パーンって。

高松
確かに、あの頃よくパーンってなってた(笑)

──どうなっちゃうんですか、それは。

奥村
仕事が終わらなくてお昼を削って息つく暇もなく作業をしちゃったり、家に帰ってもぐるぐると考え続けたり。でもだんだんそういう自分にも疲れてきて、もう泣きたい…みたいな。

そんなときに先輩から「無理をしてでも仕事を終えるのは偉いことじゃない。ここではキャパオーバーだと声をあげることの方が大事。無理だというのも仕事だよ。」と言われたんです。

──どう思いましたか。

奥村
「本当かな?」って思いました(笑)。終わりませんって言うのは怖いし。だって、終わらないのは自分の能力が足りないからだと思っていたので。

──すぐには受け入れられなかったのですね。

奥村
そうですね。1年くらいは「スケジュールを守ろう」と心の底からは思えませんでした。

とにかく悔しくて。自分の企画をやりきることに意義がある、最終的に良いものができればいいんでしょ、と追い込んで。

それでも、キャパオーバーしては助けてもらうということを繰り返しているうちに、スケジュールを自分の中で管理する意味がだんだんと体感できてきて、そのうち「無理です」という声をあげられるようになってきました。

でも、ふんわり仕上げはダメ!

奥村
でも、時間の制限があるからといって、内容にこだわらないかというとそれも違うんです。編集グループではよく「ふんわり仕上げをするな」って言われるんですが。

──ふんわり仕上げ?

奥村
ありがちな正解やフォーマットに当てはめて、読みものの結末や商品ページのクリエイティブを無難に作ってしまうことと言いますか。

どうしても楽にふんわりと着地させたくなるんですが、でもそのようにして仕上げたページはたくさん赤が入って作り直すことになるんです。

「今回はふんわり仕上げでもいいんじゃない?」というささやきが頭の中で聞こえるんですけど、それを振り払って18時まではぐるぐる考えてみよう、と粘る。回り道のように見えて、実はその方法が一番近いんですよね。

──スケジュールだけではなく、内容に関してもなかなか厳しい。

奥村
そうですね。でもだからといって、時間外にこっそり下準備をしたとしても、そういうことは全く褒められない。結果が全てだよって。

だったらきちんと定時で帰って、自分の時間は好きなことをして、かつ結果を出し続けられたら一番かっこいいし、自分も気持ちいい。そんな価値観があるように思います。

あなたは、どうしたいの?

──広告を担当する事業開発グループの高松さんはいかがですか?

高松
前職はとにかくホウレンソウ(報告・連絡・相談)が徹底され、ルールもかなり厳格に決められていました。私は比較的やりたいことをやっていると思っていたんですが、それでも基本的に何かに迷ったら上司に「これはどうすればいいでしょうか?」と尋ねるという習慣があって。

でも、クラシコムで同じように上司に聞くと、明確な指示をもらう前に「高松さんはどうしたいの?」と返されてしまって。でも「え、どうしたいって何?」と頭がストップしていました。

──自分の意見をいうのは珍しかった。

高松
はい、判断は上司に仰ぐものと思っていたので、最初は戸惑いました。

それに、私が入社した時には既に「北欧、暮らしの道具店」の世界観は確立されていると思っていたので、新参者の私が自分の考えで何かを決めていいものか躊躇っていたんです。

でも、そんな時に(代表の)青木さんから「世界観を守ろうとしている人がチャレンジする新しいことは、そんなに悪い方向に行くことはないから大丈夫。」と声をかけてもらったんです。それで、そっかと見方が変わって。

──逆に、自分の意見を出さず、上司に判断を仰ぐ利点はどんなことなのでしょう。

高松
前職では担当者が誰であれ、きちんと成果を出すためにルールに則ることは大切だと言われていました。少し極端ですが、仕組み化して誰でもできるようにすることで「工場のような組織を目指す」と言われていたり。

奥村
でもクラシコムも誰かが急にいなくなっても同じ仕事ができるようにという意識はすごく強いですよね。

編集グループだと、得意な人、できる人に仕事を集中させるのではなく、あえて苦手な人にも振られたりします。

誰がやっても同じ仕事になるように、ということは心掛けられているし、ある意味工場なのかもしれません。でも、上から何か押し付けられることはない、みんなが意思をもってる工場というか。

鈴木
工場長の言うままに動く工場ではなくて、みんなが工場長になれる工場かな。

高松
クライアントワークだと、つい自分の担当だからと抱え込んでしまいがちだったのですが、今はチームで動くことをすごく意識しています。大事な撮影日だけど、体調を崩してしまったときや緊急対応が入ってしまったとき他の人が行ってくれるなんてことも。

ちっちゃい工場長がいっぱいいる、感じですね。

上司だって、悩んでるんだから…

──その工場長たちをまとめるのが、マネージャーや店長の佐藤さん、代表の青木さん。

鈴木
そうですね。ただ、上からこうしろと決めつけられることはありません。

自分たちの意見はしっかり伝えて、その上でマネージャー、店長や青木さんが最終判断をするという形です。上司や経営者のふたりだって、なにも材料がない状態では正しい判断はできないと思うんです。

それにたぶんすごく悩みながら、日々の意思決定をしているんだとも思っています。

奥村
確かに、上司も店長も青木さんもみんな悩んでる。

高松
なんでそう思うんだろう。

鈴木
なんとなく肌で感じるものがあるんですかね。

ランチで顔を合わせた時のちょっとした会話とか、日々みんなと同じフロアで店長と青木さんが率直に、時に激しく(笑)雑談している姿を見ていて。

──上司がいつも悩んでる、って見方によれはちょっと不安にもなりそうですが…

奥村
うーん、でも、透明性があるというか、試行錯誤を感じられたほうが不安にならないのかな。上司も自分と同じなんだなって。

商品ページひとつとっても、私が入社してたった2年ほどで全く変わりましたし。正しいとされることも、目指すクリエイティブも常に変化している。それって、つまりは、絶対の正解なんてない、判断をしてくれる人も常に悩んで、その時ごとに最善を尽くそうと努力している積み重ねでしかないのかなと。

鈴木
きっとこれからもどんどん変わっていくんだろうな、という覚悟はしていますね。

──全体を通してクラシコムでは、ひとりひとりが自己管理をして工場長になる「自立」した組織を目指しているのかな、と思いました。まだ手探りなことも多い。でも、手探りであるということをみんなが共有している、というのがクラシコムらしさなのかもしれませんね。

きっとこれからNGラインも変わっていくと思うので、見過ごさずにいられたらと思います。引き続き、らしい働き方を探求していきます!

 

関連:クラシコムスタッフインタビュー

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