毎月130%成長する小柄女性向けブランドと「北欧、暮らしの道具店」の共通点──COHINA 清水葵・田中絢子 × クラシコム 佐藤友子 対談後編

書き手 長谷川 賢人

写真 木村文平

毎月130%成長する小柄女性向けブランドと「北欧、暮らしの道具店」の共通点──COHINA 清水葵・田中絢子 × クラシコム 佐藤友子 対談後編
小柄な女性をキレイに見せることをコンセプトに、XSサイズの洋服を扱うファッションブランド「COHINA」を立ち上げた清水葵さん、田中絢子さんと、「北欧、暮らしの道具店」の店長佐藤による対談をお届けしています。

COHINAが生まれるまで、そしてお客さまと交流していく中で見えた価値についてなどを語りあった前編に続き、後編ではビジネス面の工夫や世界観の保ち方など、より実践的な内容についても話が及んでいきました。

毎日続けるInstagramのライブ配信からヒット商品を作る

「北欧、暮らしの道具店」店長・佐藤友子(以下、佐藤)
すこしビジネス寄りな話も伺わせてください。Instagramを活用して、お客さまとコミュニケーションをしていく中で、参考にすることってなんですか?

COHINA・清水葵さん(以下、清水)
コメントは挙がってきた数の多さに関わらず、それぞれ大切に考えています。最近よくあるのが、Instagramライブで145センチ以下のスタッフを呼びこむと、「私も145センチなんです!」「だから困っているんです!」っていう声がいくつも寄せられたりもします。

COHINA・田中絢子さん(以下、田中)
「コメント」というアクションって、なかなか勇気がいるはずなんです。だから、一人でもコメントがあれば、その下には数十人、数百人がいてもおかしくないと思います。


(←)清水葵さん (→)田中絢子さん

佐藤
コメントを含めて、公の場にアウトプットできる人って少ないですしね。代表者にぶらさがるユーザー層は、私も数で認識するよりは、リアクションの中身をフィジカルに感じられるように心がけてますね。

田中
やっぱり想像力次第な気がしていて。コメントから受ける感じの先までを考えることは、よくあります。

佐藤
わかるなぁ。私自身が「装う」ことに関するコンプレックスを、SNSでお客さまにシェアした時にいただくコメントからは、ものすごくアイデアが湧いてくる。「私みたいな誰かがいた」という感覚が1人でも確認できたら、その先に100人はいるかもしれないし、10万人いると思えれば深堀りすべきだという確信めいたものがあって。

おふたりは、次につくる洋服のアイデアって、どんなときに湧いてきますか?

清水
それこそお客さんに直接聞いてしまったりします!私だけでInstagramのライブ配信を始めて、「欲しいものを教えてください!」って。それで雑談しながら、ゼロからのアイデアもいただくこともありますし。

田中
「最近はみんな、こんなことに困っているんですよね」って気づいたり。

佐藤
雑談ライブから生まれたアイデアで、ヒットした商材はあります?

清水
一番は冬用コートですね。実際にサンプルができた後、Instagramのライブで先行してお見せして、「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」っていうご意見を反映して、実際に襟の大きさを変えたり、コートの色を一緒に選んだりしましたね。

田中
投票機能を使って、多かったものを実際に商品化するという。


Instagram liveで先行公開したミドル丈ダッフルコート

佐藤
へぇー、面白い!

清水
それは本当に人気でしたね。私は学生の時に、マーケティングを学ぶ授業で「参加型開発」という事例を見たことがあったんです。実際に自分が関わってみたら、お客さまが欲しいものを作りたいという感覚で向き合えて、本当にそれが実現できていると思うんです。それは私にとってもやりやすいですし、お客さまにとっても「あっ、あのときに話していた洋服ができたんですね!」って言ってもらえて、実際に参加している感覚もあるみたいで。


実際のInstagram liveの様子

佐藤
そういうことをナチュラルにやれるって、素晴らしいなと思います。

田中
私たちって「これを作りたいんです!」という世界観があるタイプというより、お客さんの代弁者であって、みんなが欲しいものを代わりに作る便利屋さんみたいな気持ちでやっているんですよね。良くも悪くも世界観へのこだわりがなく、お客さまのために存在しているから、みなさんの言うことが全てなんですよ、という考えは基本的にありますね。

それこそ私たち、1年中365日インスタライブをやっているんですけれど…。

佐藤
365日?! それはすごい差別化ポイントですね。これだけ頑張れる人そうそういないと思います。

田中
私たちのお店の原点なので、Instagramはなくてはなりませんね。

毎月130%成長を続けるCOHINAを支える、リピート率の高さ

佐藤
業績も好調ですか?

田中
直近だと、毎月130%成長しています。

佐藤
えっ!? 「毎月」ですか。それはすごいですね……!要因はSKUを増やせていることもあると思うのですが、オリジナル商品の在庫量を増やせていること、ライブ配信などのプロモーションを工夫されていることが勝因ですか?

清水
大きく言うとそうですね。業績が上がっているのは、本当に両輪です。

プロモーションではSNSに力を入れています。COHINAの洋服をお届けする中で感じたのは、オリジナルでサイズがぴったりはまるものに出会えると、お客さまは感動してくださいますし、その喜びの声はまだ買ったことがない方にも届きやすいんだなぁ、と。

これは肌感覚なんですけど、それこそ毎日のInstagramライブを、口コミやレビューをチェックする感覚で見てくださっている方も多いんじゃないかなと思っています。そこから初めて購入してくださる方も多いようです。

田中
たしかにCOHINAはリピーター率もすごく高いです。何十回と買ってくれる層が厚くいます。

佐藤
そうか、一回信じたらCOHINAしかない!ってなりやすいサービスですもんね。

田中
「今、家にあるベーシックアイテムをCOHINAで総とっかえしている最中です」とよく言われます。セレクト商品も一部あるのですが、今後はよりオリジナル商品を強化していくつもりです。

佐藤
やっと好みで、体のサイズにフィットするブランドに出会えたからなんでしょうね。私たちで例えると「食器棚の食器を全部替えてます!」みたいなことだと思うと、すごい(笑)。

田中
まさに「アップデート!」という感じですね。COHINAの洋服は好みや流行に左右されづらいベーシックなものを中心に作っているので、刺さりさえすれば何回でもお客さんはトライしてみようと思ってもらえるのは、私たちの強みかなと思います。新たに知ってくれる人が増えていけば増えていくほど、リピート率も大きくは変動せず、業績として成長が望めるのは、商材の力だと感じています。

プロは「自分」と「お客さま」の間を行き来できる

佐藤
COHINAさんのラインナップをあらためて見ると、統一されたテイストを感じますね。

田中
世界観の担保は絶対的に私たちの仕事なので、「好き嫌いの線引き」はしていますね。だから、嫌いなものはそもそもラインナップには入ってこないようになっているはずです。

佐藤
おふたりは「お客さんの代弁者や便利屋である」という、ある意味での献身的な気持ちと共に、ご自身の好みやセンスも大事にされているんですね。

これって要は恋愛と一緒で。自分を無くして捧げるだけの人がどうにもモテないのと同じで、どこかにちゃんと「自分」がないと、やっぱりお客さまからモテないと思うんです。

清水
わかりやすい!そう思います。でも実際に、失敗したこともあって。「お客さまの意見から作ったものだけど、私はときめかない」というものは、あまり売れなくて。

佐藤
あ、それは本当にうちも同じ!モテないんだよね、その商品ってね。

清水
モテない!ぜんっぜんモテなくてびっくりしました。

佐藤
自分の「好き」を貫かないと、統一された世界観は結果的に生まれないから、人が寄ってこないと思うんですね。

つまり、「自分」と「お客さま」の必要に応えようとする献身的な動機の行き来ができる人が、やっぱりプロフェッショナルだと私は思うんです。自分が強くてエゴイズムに走ってしまう人もいるし、かえって捧げすぎちゃう人もいるけど、その間にいるのがプロ、というか。

自分もそういうふうになりたいと思って修行を積んでいるつもりだけれど……おふたりはその意識について、どう考えますか?

田中
「一歩だけ先」を見せられるようにするくらいの立ち位置がちょうどいいんじゃないかと思っています。

みんなが「これを欲しい」といったものを、本当にそのまま作って渡せば、みんなも「わかるー!」って受け入れてはくれるはず、でも、そんなにテンションは上がらないのかなと思うんです。そこにちょっとだけの華やかさや憧れを足せるのが、COHINAの仕事のはずです。

清水
あとは、お客さまの意見を聞いて、返ってくるコメントの「裏にあるもの」を想像するようにはしています。私も含めて、お客さまも完璧ではない。服にめちゃくちゃ詳しいわけでもないし、出てくる意見は「その方の想像の範囲内にあるもの」だと思うんです。

つまり、そのコメントの背景を探っていくと、本当はもうちょっと背伸びしたものがあったり、提示されたらもっと嬉しくなったりするものがあるかもしれない。たとえば、今まで着ることに挑戦したことがないから、自分では想像しえないものだってあるはずですよね。「Vネックが欲しいです」と言われたとき、ほんとうに欲しいのはVネックではなくて「大人っぽいラインに見える服」かもしれなくて。

意見の背景を想像しながら作るということで、「私の作りたいもの」と「お客さまの言っているもの」の間をとるというか……うまく組み合わせて、落としこんでいる感覚です。

佐藤
なるほど。意見を聞く姿勢はあるけれど、収集した情報を消化させる段階で「私」っていう主語を持ち出す感じなんですね。

清水
そうですね。

マイノリティな「私」を使うからこそ、誰かにとっての居場所ができる

佐藤
それも私と一緒で、すごい似ています!たぶん「入り口」と「消化段階」のところに「私」があるんですよ。

Instagramなどでも、まずは自分から「私はこう思うんですけど、みなさんはどうですか?」って問いかけるときに「私」を使いますよね。そうすると、先に私を使うから、問われた相手も「私はこうです」って言いやすくなる。

そこから、返ってきた意見の裏には何があるのか、どういった顧客インサイトがあるのかについて、再び主語に「私」を持ち出して感覚的に考えていく中で、お客さまにとって一歩先のアウトプットがプロダクトとして生まれたりする……クラシコムでも「私」を大事にしようという編集方針なのですが……わたしも未だにこの「私」の使い方をスタッフに説明するときに苦労することが多いんですよね。

清水
たしかに塩梅が難しいところですよね。

佐藤
つまり、「私」を出すタイミングが肝なんだろうなって。そして、出したアウトプットは申し訳ないけれど「私」のものではなくて、もっと多くの方に使っていただけるように考え抜いたもの。なぜなら、そうしないとお客様に必要とされるものにはならない、つまり売れないからです。独りよがりではダメだし、献身的だけでもダメ。

あぁ、なんだか「私」の使い方をすごく整理できた!会社に帰ったらすぐにしゃべろう!(笑)

清水
「北欧、暮らしの道具店」さんも同じだと思うのですが、共感が大事だからこそ、ブランドや会社として何かを打ち出すというよりは、「私はこう思っている」「私はこれで悩んでいる」みたいに、個としてのメッセージを発したときほど、みなさんの反応が熱く返ってくるというのは感じています。

佐藤
うんうん。

田中
「こんなこと自分だけだと思っていた」「こんな人がいたんだ」「私もそうなんです」っていうふうに共感を重ねることによって、みんなが盛り上がっていくんですよね。

佐藤
「北欧、暮らしの道具店」の編集方針に、『「私たち」みたいな「誰か」がフィットする暮らしをつくるのを助けるメディアです』というのがあります。

編集や物作りも、すべてそのためのものにあると、スタッフとよく共有しているんです。それならば、「私たち」はどんな人だろうと、その編集方針を定めてから考えることが改めて多くなるんですよね。

それから、「フィットする暮らし、つくろう」という価値観を必要とする人についても想像します。きっと、今までの人生で、自分がちょっとマイノリティだなって感じてきたか、あるいは一瞬でも感じたことのある人じゃないかなって。それが「北欧、暮らしの道具店」のユーザーなのかもしれないと思うんです。

清水
クラスの中に、一人や二人いるかもしれないような……。

佐藤
そう!もしかしたら、「北欧、暮らしの道具店」のコアユーザーは、自分を他者と共有できなかった体験を持つ人たちがたくさんいるんじゃないかとも最近思っていて。

私も悪目立ちしたくなくて、きゃあきゃあと楽しそうなグループの中で、冷めている自分を隠して、一緒にきゃあきゃあ言ったりしていたほうなのね(笑)。だから、「私」という主語にはこだわりがあるし、このやっと見つけた場所だったら、自分が好きなもの、自分の好きなテイストに「好きだ!」と声を上げても許される。だからこそ、お客さまに気後れしない、気後れさせないように徹頭徹尾考えて、手を動かしているんです。

田中
COHINAのお客さまも、すごく近い気がします。ファッションが好きで好きでしょうがないというよりは、今をなんとなく楽しめてはいないけれど、それを発言する権利すらもないような気配を感じている人たちなのかなと思っていて。

小柄な人は服を買いに行ったとき、Sサイズを試着してみて「大きいな」って思ったら諦めるしかない。自分が世の中の基準に合っていないような、自分が世の中の対象になっていないような気もして……それが、COHINAなら自分の好きなことを発信していいんだと感じられて、居場所を見つけたような感覚を感じてくださっているのだと思います。

佐藤
そうでもないと、何十回もリピートして購入するという行いは、お店としてはありえないことですよ!そんなこと起き得ない現象だと思います。それくらい深いエンゲージメントを作れているんだろうし、Instagramのライブ配信を365日やったり、最近は「お茶会」を開いたりするのも、「自分の居場所」と思わせる雰囲気づくりにつながっているんでしょうね。

他にも、これからの展望って、あるんですか?

清水
今年は海外展開と、実店舗を作ろうと考えています。ショールームのようなものができたらと。やっぱり「試着したい」というお客さまがたくさんいらっしゃって。

佐藤
ポップアップイベントでは賄えないくらい、その要望が大きいんですね。

清水
都内でアクセスが良い場所を、必死に探しているところです。

佐藤
へぇー!もう、もう本当にCOHINAさんはウォッチし続けたい!また、いろいろ教えてください。今日はありがとうございました。

前編:「誰かの人生を変えるブランド」を作る、第一歩に共通すること

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