暮らしを支えるヒットブランド

「取っ手のとれるティファール」のその先へ。「インジニオ」シリーズの進化と課題

書き手 阿部 花恵

写真 鈴木 静華

「取っ手のとれるティファール」のその先へ。「インジニオ」シリーズの進化と課題
子どもの頃からなんとなく存在を知っていて、大人になってふと気づいたら手に取っていたーー。時代を超えて愛されるロングセラーブランドの秘密を知ることは、「本当にいいもの」とは何かを考え直すことでもあります。

「暮らしを支えるロングセラーブランド」は、長く、広く、多くの人々に愛され続けている商品にスポットをあてた連載シリーズです。

今回は、「取っ手のとれるティファール」として知られる調理器具のトップブランドであるティファールのフライパンについて、株式会社グループセブ ジャパンの藤井由美子さんにお話をお聞きしました。

株式会社グループセブ ジャパン
マーケティング本部
マーケティングコミュニケーション部
PR&デジタルコンテンツ マネジャー

藤井由美子さん

2000年、株式会社グループセブ ジャパンに入社。販売促進、製品担当などを経て現職に。調理器具や小型家電を中心に展開する「ティファール」ブランド全般のPRやマネジメント、デジタルコンテンツなどを担当。

パリの住宅事情から生まれた画期的フライパン

――「取っ手のとれるティファール」が日本で誕生した背景について教えてください。

1996年、「ティファール」ブランドの本社があるフランスで、取っ手を外せるタイプのフライパンという、それまでになかった製品を開発したのが始まりでした。日本での販売開始は1998年ですから、今年で21年めとなります。

――取っ手が取り外し可能というユニークなフライパンは、どのような背景から誕生したのでしょうか。

フランスのパリの住宅事情が関係しています。世界的に人気で家賃が高いことで知られる歴史ある都市ですから、どうしても古くて狭いアパルトメントが多いんですね。

となると、キッチンスペースも必然的に狭い。じゃあ何とかして省スペースで収納できる調理器具をつくれないか、ということで開発が始まったと聞いています。

その目論見は見事にあたり、本国では爆発的ヒットに。その流れを受けて、日本を含めさまざまな国でも「取っ手のとれるティファール」の販売が始まりました。

「キッチンが狭い」「収納スペースが少ない」というパリの悩みは、日本の都市部の家庭でも共通するもの。取っ手を取り外すことができて、かつ重ねてコンパクトに収納できるフライパンということで、日本でも発売直後からものすごく大きな反響がありましたね。

そのタイミングで、それまでの「セブ」から「ティファール」にブランドスイッチ。テレビCMを打ったところ、一気に認知が広がりました。

片手ワンアクションと安定感が本家の強み

――日本での販売開始から21年、その間にはリニューアルも行ってきたのでしょうか。

もちろんです。「取っ手のとれるティファール」は「インジニオ」というシリーズ名で展開していますが、改良を繰り返して現在は5世代目にあたります。

まず大前提として、ティファールの専用取っ手はフライパンやソースパンなど、サイズの異なる調理器具に着脱できるようになっています。さらに、現在販売中のものはもちろん、過去20年間に販売してきたすべての「インジニオ」シリーズのフライパンやお鍋に使うことができます。

そのためには、ガッチリと固定しすぎるのではなく、ある程度の“遊び”が必要。とはいえ、あまりにカタカタしてしまうと調理器具としてはちょっと心配になってしまいますよね。

試行錯誤の結果、2013年春からは3点固定システムの取っ手を採用しました。上部2カ所と下部1カ所の計3点で固定することで、ある程度の“遊び”を保ちつつ安定感を実現することができたんです。

――片手ワンアクションで着脱できる手軽さもいいですね。

日常的に料理をするご家庭なら、おそらくほぼ毎日フライパンは使用しますよね。着脱のアクションはシンプルかつ少ないほどいいと思っています。お料理の最中は同時進行で手を動かす場合が多い。だからこそ片手で、ワンアクションかつスピーディーに作業できたほうがストレスなく便利です。

3点固定システムだからこそのフィット感と安定性と、外すときも付けるときも片手でワンタッチできる手軽さ。いずれも20年以上に渡って「取っ手のとれるティファール」の開発・改良の歴史を積み重ねてきたティファールだからこそ実現できた、オンリーワンな強みだと思っています。

調理面にも工夫を凝らし、料理の悩みを軽減

――フライパンやソースパンの調理面にはどのような工夫が?

使い始めのこびりつきにくさが長く持続するように、独自のコーティング技術を施しています。長く安心してご家庭で使っていただけるよう、摩擦や温度変化に対する強度に関しても実証実験と厳しい自社テストを重ねています。また、調理面の中央にある「お知らせマーク」は、ティファールだけの特許技術。食材を入れる適温になると模様が変わり、理想的な温度で調理できるタイミングを教えてくれます。

今は共働きのご家庭が増えていますから、忙しい時間をやりくりしながら料理をしているという方が大勢いらっしゃいますよね。そんな方々が少しでも効率よく、楽しく料理ができるようなお手伝いをしていきたい。料理をする人を快適にサポートする調理器具でありたいと常に思っています。

「収納に便利」だけが「取っ手のとれるティファール」のよさじゃない

――すでに一般に広く知られているブランドですが、今後の課題は?

国内におけるプロモーション戦略については、まだまだ課題がたくさんあると感じています。販売開始から20年以上が経ち、「収納に便利」という認知は確かに広まってきました。でも、それ以外の特長がなかなか浸透しきれていない気がするんですね。

たとえば、取っ手をはずせばオーブン皿としてそのままオーブンに入れることもできますし、焼き上がったそのオーブン料理を熱々のまま食卓へ出すこともできます。また、「シールリッド」という専用の蓋をすれば、そのまま移し替え不要で冷蔵庫に保存もできます。

日々の料理を快適にサポートするための機能と効率性、かさばらずにしまえる収納性の高さ、器や保存容器としてもそのまま使える汎用性は、洗い物も減らせるというメリットにもつながります。

それぞれのご家庭に応じた、いろんな用途や使い勝手のよさがある。そのことをテレビCMや雑誌媒体、ウェブ媒体など、さまざまなツールを通じてお伝えしていけたらと思っています。瞬発力という意味ではやはりテレビCMが強いと思いますが、雑誌媒体は興味のある方が深く読んでくださいます。どれか一本に絞るということではなく、今後はウェブ媒体やSNSなどを積極的に活用することも考えています。

「取っ手のとれる」の先にある「インジニオ」シリーズだからこその長所を、一人でも多くのお客さまに知っていただけたら、うれしいですね。

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