「斜め上」は目指さない!クラシコム社外取締役・倉貫義人と考える新たな環境で成果を出すためのステップ。

書き手 クラシコム 筒井

写真 岩田貴樹

「斜め上」は目指さない!クラシコム社外取締役・倉貫義人と考える新たな環境で成果を出すためのステップ。
自分らしさを失わず、新しい環境でも高い価値と成果を出していく。

約半年前から社外取締役としてクラシコムの経営へ関わってくださっている、ソニックガーデン 代表取締役の倉貫さんへ私、クラシコム 人事の筒井が感じた印象です。

大きな期待は持っていたものの、社外からスペシャリストを招き入れるという新しいチャレンジにドキドキ緊張していた私たち。しかし、倉貫さんはクラシコムの中に自然とすっと溶け込み、今ではすっかり私たちの心強い味方として日々を支えてくれています。

そこで、今回は倉貫さんがしなやかに居場所と価値を生み出してきたそのプロセスを、緩やかにおしゃべりしながら振り返ってみました。

社外取締役という外側から組織に関わる倉貫さんの考え方は、この春、新たな環境に挑戦するぞ!という方々にも参考になるお話なのではないかと思います。会社の楽屋を覗き見る気持ちで、楽しんでいただけるとうれしいです。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長

倉貫義人

1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープン ソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを創業。
著書『管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』

好きなこと:料理をする、漫画を読む、愛犬と散歩する

クラシコムがうまくいってる理由が知りたかった。

筒井
倉貫さんがクラシコムに関わるようになったもともとの動機は、他の会社で経営者のかばん持ちをして、経営を学びたいって思っていたからでしたっけ?

倉貫
そうです。

僕は、35歳の時にその時勤めていた会社で社内ベンチャーを立ち上げ、経営者になりました。それまではずっとエンジニアだったので、経営については誰にも教わったことがないまま、本を読んだり、失敗を繰り返しながら、ここまでなんとかやってきたという感じです。

そして2019年で起業してから10年という節目を迎えて、経営者として次のステージを意識し始め、他のやり方を見てみたい、経営者の側で勉強したいと思うようになったんです。

筒井
どうしてクラシコムを選んだのでしょう。

倉貫
その頃、(クラシコム代表)青木さんとはゆるやかにSNSで繋がっているくらいだったんですけど、発信されている内容にとても共感していて。あれ、これ書いたの自分かな?と思うくらい言っていることが似てたんですよね。

一番シンパシーを感じたのが、クラシコムのビジョンである「自由・平和・希望」。これを経営者が堂々と発信できるって、その…だいぶ……

筒井
変わってる?(笑)たしかに、競合に勝つぞ!とか、○年後に売上○億円を目指すぞ!といった、強い言葉をクラシコムで掲げることはほとんどありませんね。

倉貫
かといって世界を変えるとかも言わないし、経営戦略がこうでああで、なんてことも言わない。ビジネスも会社もうまくいっているのを外から見て知っていたから、どうしてだろう、興味あるなぁって思ったんですよね。

このエンジニアチームなら大丈夫、と思ったワケ

筒井
倉貫さんには、まず半年間お試し期間として関わっていただきましたよね。クラシコムのエンジニアとはまずどんな風にコミュニケーションを始めたんですか?

倉貫
お互い本当にフィットするのか不安もあったから、まずはゆるやかに、エンジニアのみんなが月一でやっている勉強会に、「初めまして〜、遊びに来たよ〜。」という感じで参加しました。

もしその時に、中の人たちが保守的な考え方だと感じたら、お手伝いするのも難しいかなと思ったんですけど、みんな前向きだし、モブプロ(*モブプログラミングの略。複数人で同時にプログラミングを行うこと)などの先進的なやり方にもトライしていて。

僕らの業界用語で時代遅れのことをレガシーって言うんだけど、人も技術もレガシーじゃなかったことが決め手だったかな。チームとしては立ち上がったばかりの時期で、荒削りで整備されていないところももちろんあったけど、だからこそ伸び代がありそうだなと感じました。

筒井
ソニックガーデンのエンジニアさんたちと似ているところ、違う部分はありました?

倉貫
僕の考えだけど、活躍するエンジニアというのはみな共通した資質をもっていて、それは「ほっといても挑戦しちゃう」ということ。自分たちで考えて、こういうのやってみたらいいと思ったのでやってみました、やってみて良かったです、ダメでした、というトライを言われなくても勝手にやってる。そこは似ていましたね。

逆に、ソニックガーデンと違うのは…みんな、クラシコムのこと大好きなんだなって。ソニックガーデンとは好き度が違うというか、好きの種類が違うというか。

クラシコムの人たちは、宝物にそっと触れるみたいに、「北欧、暮らしの道具店」を大事にしなければいけないんだっていう感じがある。その宝のもとである経営者の2人(代表の青木、取締役の佐藤)に対するリスペクトも感じる。

筒井
盲目的に没頭するような「好き」というよりも、このクラシコムという稀な存在を、みんなで力を合わせて守らねば!というマインドは、私にもあります。

倉貫
ソニックガーデンは、求心力のあるプロダクトが一つあるというビジネスではなくて、クライアントからの要望に従ってシステムを開発する会社だから、プログラマたちの仕事に対する好きの性質やベクトルは違ってくるのかもしれません。

まずは落ち着いて隣に一歩。新たな居場所のつくりかた

筒井
それくらい強い世界観があるクラシコムに外の人として関わるのは、もし私が倉貫さんだったら、やっていけるかなって怖気付いちゃいそうです。

倉貫
いやいや、僕もハードル高く感じてますよ(笑)。

でも、だからと言ってやらない理由にはならないかな。いきなり大きなことをするんじゃなくて、まずは成果を出せそうなところで貢献できたらいいかなって思っている。これは僕の思う、居場所の作り方なんだけどね。

自分が得意か苦手かもわからないところにいきなり入って、成果を出すぞ!ってもがいても、本人も周囲から見ても苦しい。最初は極力好きで得意なことに注力して、成果をださせてもらう。そこで価値があるなって思ってもらえたら、それを軸足にして、他の領域も入れるようにするっていう僕の作戦。

筒井
倉貫さんは、自分が持っている領域と相手の領域の重なるところを見つけるのがうまいんですね。みんなのニーズと自分の得意との重なり。それが見えていると、無駄に焦らずに済みますよね。足元がぐらつかなくて。

倉貫
そうそう、少なくともそこでは成果出せるぞと思えると、落ち着くよね。

「新規事業をやる時には、まずは上下左右に動くのが良い。最初から斜め上、斜め下に行こうとすると失敗する可能性が高い」という話を聞いたことがあって。将棋の盤をイメージするとわかりやすいかな。

右にずらすだけだったら、自分の得意な領域のまま、新しいことを一つ取り入れたらいいから。そこで軸足が固まってきたら、今度は上にピボットしたらいい。コツはいっきにいこうとしないこと。

筒井
たしかに、最初から右上に行こうとジャンプすると、両足とも空中に浮かんでしまって、うまく着地できずにグキって足を捻挫しそうです。私は「はやくすごいことやらなきゃ!」って気が急いて、斜め上ばかり見て、足を挫くコースだな……。

倉貫
落ち着いて、まずは一歩隣にいく、そして上にいく。そしたら結局ジャンプしたときと同じ斜め上に行けてるんだよ。

筒井
たしかに、斜め上を見ながら足元がおぼつかずに焦るよりも、結果として早く行きたいところに到達できそう。

倉貫
そう、だから最初は焦らず、軸足はどこかなとじっくり見ることから始める方が、自分には合ってるんだよね。

目的は一旦忘れて、プロセスを楽しむ

筒井
倉貫さんは、もとの動機は経営について学びたいという気持ちだったのかもしれないのですが、端から見て、なんだかとっても楽しそう。倉貫さん、面白がってそうだなって思うのですが。

倉貫
たしかに面白い。というのも、僕は「やり始めの動機」と「やってる途中に楽しむこと」は別物で、同居できると思ってるんだよね。

筒井
同居…?最初に掲げた目標を達成するためには、途中がツライのは当たり前って、信じ込んでしまってる自分がいます。

倉貫
今回の話の元々のモチベーションは、経営者として勉強したいし、やるからには貢献したいという思い。でも手段を実行してる最中は、あまり動機を意識しすぎず、プロセス自体を楽しんだ方が得なんだよね。だから、なるべく楽しむようにしてる。

筒井
頭ではよくわかるけど、プロセス中に私は楽しむことを忘れちゃう時もあるな〜。どう楽しむ工夫をするんですか?

倉貫
というか、楽しむこと忘れる時ってありますかね?

筒井
ありますよ。やんなきゃやんなきゃ!!って必死になりすぎて。元々勉強したいってことが目的だとすると、なんかインプット増やさなきゃ、勉強しなきゃ!って。

倉貫
僕はやってるときは元々の目的忘れてるかも。僕には、何かをしなきゃって気持ちがあまりないかもしれないなぁ。

クラシコムでの仕事も、例えば半年でエンジニア5人採用します、というように成果を数字でコミットして行動してる訳ではなくて、自分のできることの中でベストエフォートを注いでパフォーマンスを発揮していこうとしている。

僕から見るとクラシコムのみんなも既にこのやり方をしていて、クラシコムがうまくいっている秘訣でもあるんだと思うんだけど。全てのことに明確に目標をたてるというよりも、今できる最高の仕事をしていこうという。

筒井
楽しんでたら、元々の目的を自然と達成してるって最高ですね。肩に力を入れて苦しみながらやろうとするより、実はずっと早くできちゃうのかもしれない。

倉貫
数字もノルマもないと、逆に自分のできるギリギリまではやろうかなと思うじゃない。

持っているものはできる限り出したいけど、自分の限界を超えてつぶれちゃうと元も子もないから、そこまではしない。ノルマじゃないから、できてなくても苦しまなくていいし、楽しくやれる。

筒井
新しい環境へ飛び込んだときに、あえてノルマを設定しないことで、健やかに、でも力一杯チャレンジできる状況を自分で作っているんですね。

倉貫
実はね、ちょっと実験なんだけど、エンジニアたちとだけじゃなくて、社長室(*クラシコムで部署間を超えたテーマを扱う、去年12月に新設されたばかりの経営直下のチーム)とも関わり始めていて。

筒井
その話を小耳に挟んで、エンジニアチーム以外にも!?ってびっくりしました。

倉貫
僕はね、たぶんプロセスオタクなんだと思う。

筒井
プロセスオタク?

倉貫
ソニックガーデンでは、いろんな企業から発注を受けて作る「ソフトウェア開発のプロ」として仕事をしてきたけど、実はそれはプロジェクトを進めるプロなんじゃないかと最近気づいて。まだ具体的な課題に落とし込めていないふわっとしたテーマを相手に仕事している人たちを前に進めて、成果を出すまで支援するプロといえるのかもって。

筒井
何であれ、プロジェクトを進め、成果を出すプロセスについて研究しているオタク、ということですね。

倉貫
そう。抽象的なテーマにトライしている人たちに対して、自分がプロセスオタク、進め方オタクとしてどんな貢献ができるか、ちょっと楽しみなんだよね。

人も仕事もコントロールはできない。トンガリボーイの気づき。

筒井
倉貫さんのクラシコムへの関わり方も、ソニックガーデンのあり方も、オーナーシップというか、自分でハンドルを握っている感じがあります。そのルーツはどこにあるのでしょう。倉貫さんて、どんな子供だったんですか?

倉貫
うーん、目立たなくて教室の隅で本を読んでるような感じだったかな。小学生の時はね、言うこと聞いてちゃんとしなきゃと思ってた優等生だった。

そこから、人の基準ではなく、自分で自分の道を選べるってふうに変わった一つの転機は、プログラミングに出会ったことかな。全部思い通りにできて、自分でルールと世界が作れるってすごく面白いって思ってた。小学生の頃から、ファミコンの会社に就職するにはどうしたらいいのか、どういう大学に行ったらいいのかとか考えていたし。

もうひとつは、私立の中学受験に失敗したこと。優等生だったはずなのに。

筒井
それは結構ショックだ。

倉貫
そこで多分脱線したんだと思う。全然前向きではなく、超挫折だったけど。

筒井
言うこと聞いていたのに大きな挫折をしたなら、今度はパンクになるというか、反体制的というか、まわりの言うこと全部聞く耳もたねえぞ、俺は俺だ!みたいにグレちゃわなかったですか?

倉貫
まあ、今でもマインドはパンクで反体制的だよ(笑)。

筒井
でも、倉貫さんは、そのパンクを相手に押し付けることはしないですよね。そのニュートラルさはなんなんだろう?ってすごい思っています。

倉貫
最初からそうだった訳ではなくて、挫折と脱線をし続けた結果そうなっただけなんだけどね。

社会人一年目のプログラマになりたての頃は、人と一緒に仕事するのはすごく苦手だった。今ではこんなにしゃべっているけど、コミュニケーション能力はマイナス50くらい。

筒井
ずいぶんマイナススタートですね。

倉貫
言ってみれば、プログラムはできるけど、嫌なやつだったと思う。だって正論しか吐かないからね。ぐうの音もでないことしか言わない、みたいな。上司も扱いづらい。

でも、プログラミングは一通りできたので最初はよかった。それがあるとき、プレイヤーを卒業して、リーダーとして若い人の面倒をみなければいけないという立場になって、あれ、どうしたらいいんだっけ?とわからなくなった。

筒井
コミュニケーション能力マイナス50のトンガリ正論ボーイが、リーダーへの道を進んでいくということですね。

倉貫
その時は、正論では人は動かないということもわからなかった。書いた通りに動くプログラムと同じように、人もチームも全部コントロールして動かせば成果はでるのだろう、と思っていて。確かに短期的に見るとそれでも成果は出るけど、楽しさはなくて。

関わる人も増えはじめたときに、とうとうコントロールしきれなくなって、一回チームを手放さざるを得ない状況になってしまったんだよね。その時に初めてコンピューターと人は違うんだと気づいた。

そうだよな、人をコントロールしようと思っても無理だよな、と。じゃあ、成果を出すにはどうしたらいいのか?と、別の道に目が向き始めた。

たまたまその時に注目されていたアジャイル開発(*短い期間で小さなリリースを繰り返しながら進めるシステム開発の手法)の本を読んだら、人を中心に置きましょうと書かれてあって、なるほど、これかと。早速本の通りに試してみたら、とてもいいチームができた。

筒井
新しい成功体験だ。

倉貫
でも、その良いチームで社内ベンチャーを立ち上げ、新規事業をやろう!としたときに、またつまずいだ。今度はビジネスをコントロールしようとしたんですね。

筒井
でもできなかった。

倉貫
そう。商売って自分ではコントロールできないんだなぁ、と。じゃあ、人をコントロールするのをやめてアジャイル開発に変えたのと同じように、ビジネスもアジャイル的にやれないかな?と、だんだんと自分のコントロール下から手放していくと、軌道にのってきた。

筒井
岐路に立つごとに、コントロールされない方の道を選んでいったんですね。

こんな生き方もあると証明していけたら

筒井
今後の話もしたいのですが、クラシコムと関わりつづけることであわよくば得たいと思っていることってありますか?

倉貫
今関わっているエンジニアたちが、理想的なチームになってくれたらいいなというのはあるけど…。あ、思いついた。チームの変化の過程を記録に取りたいな。

筒井
記録?

倉貫
今までは自分の会社でいろんな新しいあり方にチャレンジをしてきたけど、自分の会社じゃなくても実現されて、しかも自分は現場にも入らずに、直接的な指示はしない中で、いいチームをつくるところに関われたなら……

筒井
汎用化できるかも?

倉貫
そう、結晶化できるかもって。重要な要素だけを凝縮できたら、それが新しいメソッドになる。世の中で、そんなの難しいよと思っている人たちに、こうやったらできたよって証明を見せたい。

僕は、もしかしたら、自分の考えていることを証明したいのかもしれない。証明できたよってみんなに伝えたいのかも。

筒井
社外取締役になった最初のきっかけは、経営者としてのインプット・勉強のためだったけど、そのプロセスを通じて、自分が大切にしていることって普遍的だったな、合ってたなって証拠を一つでも増やせたら、ということですね。

倉貫
そうだね。みんなが全部同じやり方に従うのは、個人的には少し居心地悪く感じてしまうんだよね。マジョリティは当然あって良いのだけど、でもそれだけで全てが支配されるのは嫌だなと。

オルタナティブな道は残しておきたい。だから自分たちのトライを発信し続けたいとも思っているのだと思う。

違う道があると知ったら、今はできていないけど将来挑戦したいと思っている人たちの希望になれるかも。絶対無理だと思っていても、誰か1人でも宇宙に行けたら、宇宙って行けるんだって星空を仰ぎ見れるし。そういう希望が、小さくてもいいから見せれたらいいな。

筒井
これからも一緒に希望を仰ぎ見る仲間として、よろしくお願いします!

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