「想いだけのヤツ」と「伝えるヤツ」のタッグは、No.1No.2の最適解?──ラブグラフ 村田あつみ×クラシコム 佐藤友子対談【前編】

書き手 小野民

写真 忠地七緒

「想いだけのヤツ」と「伝えるヤツ」のタッグは、No.1No.2の最適解?──ラブグラフ 村田あつみ×クラシコム 佐藤友子対談【前編】
twitterからこぼれる「本音」に、「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤が、「分かるなぁ」と共感していた女性がいます。

その人は村田あつみさん。学生時代に起業し、出張写真撮影サービス「ラブグラフ」を、瞬く間に人気サービスに成長させたやり手です。でも、もちろんそこには成長していくときの痛みや、変化が伴ってきたことは想像に難くありません。

一方の佐藤も、時期や年齢は違えど会社を共同創業した経験を持ちます。女性であり、会社のNo.2であるという共通点に、感じるところがあるようです。

かくして、「ぜひゆっくりお話ししたいな」と佐藤が誘い、村田さんも「実はいろいろ聞きたいことがあったんです!」とのこと。

普通に生活をしていたら、なかなか腹を割って話すことのない、16歳の年の差の2人は、いま、それぞれなに悩み、進んでいこうとしているのでしょうか。

株式会社ラブグラフ 取締役CCO

村田あつみ

1991年生まれ。大学時代からWebデザイナーとして活動。大学では、社会心理学の視点からインターネット時代におけるアイデンティティーについて研究し、卒業論文「ソーシャルノロケの社会学」は優秀論文に選出。現在は、大学在学中の2015年に立ち上げたフォト撮影サービスを運営する株式会社ラブグラフの取締役CCO(Chief Creative Officer)を務める。

好きなもの:写真、映像、読書

「想いしかないヤツ」と「スキルだけある自分」の出会い

クラシコム・佐藤(以下、佐藤)
村田さんと私は、会社を創業してNo.2の立場だという共通点があります。もちろん違いもあって、村田さんは、大学生のときにラブグラフを起業しているんですよね。

若くしてすごいなぁと思うんだけれど、その経緯を教えてもらえますか。

ラブグラフ・村田あつみ(以下、村田)
大学では文系の学部に所属していましたが、就職先を考えるとやりたいことと合致しない気がして、1年生の時点で焦りだしたんです。

パソコンに向かっているのが好きだし、どちらかというと無口だし、コミュニケーションが得意じゃない。Webデザイナーとかパソコン関係の仕事に就いた方が、まだ強みを生かせそうだと考えました。

そこで、大学の近くにあったCampusというスタートアップしたばかりの会社に、Macを持っていてPhotoshopを開いたことがあるというだけで「Webデザイナーです」と見栄をはって採用してもらいました。1年間、見習いみたいなことをさせてもらい、それから卒業までWebデザイナーとしてどっぷりつかっていましたね。

佐藤
そこでラブグラフを共同創業した駒下純兵さんに出会ったんですよね。村田さんが「こういうこと一緒にやらない?」って年下の彼を口説いた……んですよね?なんで自分が社長をやらなかったんですか。

村田
あぁ、そうですよね。もともとカップルを撮ることは、駒下がカメラマンとして始めていたんです。ただ、それがほぼ趣味というか、友達カップルを撮ってSNSに上げるという活動?みたいな(笑)。

私は当時、デザイナーとしていろんな領域の仕事をしていましたが、正直「楽しい」とは思えていなかったんですよね。心から好きなもの、いいと思えるものをデザインしたいという気持ちが高まっていたタイミングだった。そのとき、駒下がやっていることを見て「これめっちゃ好きだ」と直感で思ったんです。

やっていることに名前をつけてWebサイトを作って「リリースしました!」と言えば、サービスになると思ったんです。いま振り返るとこれがブランディングってことですよね。

実は、以前自分でもファッションスナップのWebサイトを立ち上げたことがあったけど、あまりうまくいかなかった。サイトのデザイン自体はきれいにできたけど、想いがないのが失敗の要因でした。

展望もなかったし、責任を負いたくない気持ちもどこかであったので、必死に人を集めたりとか、お願いしたりすることもできませんでした。

だから想いを持っている駒下を見て、「想いしかない、いいのがいた。私がかたちにするんだ」って思えたんです。

佐藤
想いしかないやつ(笑)。あぁ、でもクラシコムでいえば、それが私ですね。

村田
なんか雑に言っちゃいましたが(笑)、「想いしかない」ってことがすごく重要だってことに、私自身が失敗をしていたから気づいていて。

それに駒下は、人にお願いする能力がすごく高くて、そこがすごくいいな、自分にはないところだって思いました。ちなみに、想いしかないと言いましたが、駒下はカメラマンでカメラのスキルはピカイチでした。それがサービスの原点だったので、うまくいったのだと思います。

佐藤
No.2は、私と同じ立場ですよね。どういう風に駒下さんと役割の分類をされているんですか。

村田
変化してきていますが、ざっくりというと、駒下はふわっとしたビジョンを語るので、私が噛み砕いて人に伝える、実際のデザインや商品に落とし込むというような役割ですね。

佐藤
上司の駒下さんとの関係性と、自分が上司として振る舞うメンバーとの関係性、難しさを感じる部分はどこですか。

村田
駒下との関係については、ボロクソに言い合いながら意見を出し合う期間も経て、今は悩みはないですね。

他のメンバーとの関係性でいえば、私はコミュニケーションが不得意だと感じているので、人数が増えて困難を感じる場面もありました。

大勢に向けて何かをするのがすごく苦手。教育係は向いていないのに、がんばろうとしてプレッシャーを感じてしまったんです。でも、チームごとに私以外のリーダーを置くことで解決を図りました。

佐藤
人が人を育てるなんて、そもそも自然なことじゃない気もするけれど、誰かが担わなくちゃいけない。

私も創業して12年経つけれど、未だにスタッフとのコミュニケーションにおいては試行錯誤の連続ですね。と言うのも、会社の規模が少しずつ変わっていくじゃないですか。あるコミュニケーションスタイルでうまくいっていったとしても、会社が次のフェーズにいこうとしていたら、またそこからコミュニケーションのやり方やあり方にも変化を加えなければいけない。

だから、結局、ずーっと試行錯誤は続くことになるんです。その試行錯誤に「終わりがない」と感じることもあるからこそ、本当に日々精進しないと向き合えない仕事ですよね。

スマホの中に絶景をつくる、という気概

佐藤
村田さんが担っている大きな仕事はきっと、クリエイティブな面を見ていらっしゃることですよね。

村田
そうですね。デザインとかクリエイティブの部分って説明をしろと言われがちだけど、言語化が難しいものだと思っているんです。なので、自分で示せるデザインとか、言葉以外の手段で示せるものは具体的なアウトプットで示すようにしています。

ラブグラフのWebサイトトップ画面。印象的な写真が次々に切り替わる。

佐藤
メンバーの方が作られたものに対して「ラブグラフが示したいのはそういう世界じゃないよ」ってこともあると思いますが、どうやって対処されているんですか。

村田
初めは言いづらくてすごく悩んでいました。言わなきゃいけない立場なのに、人として嫌われたくないから言いづらい。けれど、言い方を工夫してなるべくがんばって伝えるようにしました。

分かりやすいところでいうと、ラブグラフは「写真が主役」ということは共有しています。

もうちょっと分解して言うと、写真の被写体を切り取ることはあまりしたくなくて、写真は1枚で使いたいことを伝えたり、写真の占有面積はグラフィックより多くしたい……というようなことです。

とにかく写真が大事。サイトの中で、絶景を作りたいと思っているんです。

佐藤
絶景!?おもしろいですね、それは。

村田
「スマホの中の絶景」ですね。開いた瞬間に「見たことない」と鳥肌が立つような一画面を作りたいと思っています。読むより感じてほしいし、見る人の体温を上げたいんです。

佐藤
ちょっとメモしていい?「スマホの中に絶景を作りたい」と。

村田
あはは、嬉しいです。

ラブグラフを立ち上げたときは、説明する相手も誰もいなかったから楽だったんです。駒下も感じるタイプなので「めっちゃよくない?」「めっちゃいい」…終了。だったんですけれど、社員が増えればそうもいきません。

佐藤
今の話、すごく興味深いですね。うちもわりと写真がメインのクリエイティブなので、通じるところがあります。

村田
そうですよね!

佐藤
メルマガやLINE@からアクセスしてサイトに飛んできて、出会い頭のページを見た時に、ある種の高揚感と、1秒もかからないくらいの時間で「これは私に関係がある」って思ってもらうための試行錯誤を重ねています。

弊社でやっているサービスは、女性のお客様が9割以上。あらゆることを直感的に判断して「これは自分のためのものだ」「そうじゃないものだ」「自分のカルチャーに属したものだ」「カルチャー外のものだ」って判断していると思うんです。

そこで「これは」って思ってもらう要素って、言語化は難しいけれど必ずあるんですよね。

うちもスタッフが50人を超えきてたので、言語化しないと、要素が正確に伝わらない難しさを感じています。うまくいったことがなんでうまくいったかを振り返って、振り返りに基づいて言語化をする。このアクティビティがあらゆる部署で今行われているフェーズですね。

みんなに言葉を尽くせるのは、言わなくても伝わる相手が隣にいるから。

佐藤
「これって本当に良いよね。わくわくするよね」っていうレベルのことに関しての言語化について、経営者同士が「いいね」「グッとくるね」という一言で共有できるのは、うちも一緒。No.1とNo.2がお互いの役割にコミットメントしながら、うまくやっていく秘訣でもあるかもしれませんね。

納得いかないことがあれば、率直に不満も出せる。この12年、ほぼ顔芸で経営しているもの(笑)。「こいつ、いい感じって言っているけど、目が笑っていない」と読みあえるくらいには、向き合っている相手だから。

お互いに説明をすることが毎回毎回ものすごく必要だったら、続いていなかったかもしれないとあらためて思いました。

村田
本当にそうかもしれませんね。

論理的には、一見「Aを選ぶべき」ってことでも、心の中では「絶対Bだ」ってことがありますよね。経営を始めた頃は、ロジカルに説明できている方を選んでしまって、結果失敗したってことが何度かありました。今振り返ると、数字では説明できない何かを見落として判断していたんだと思います。

やっぱり、自分に嘘をつくのはよくないし、違和感があるなら、その時に言わないといけないと学びました。最終判断をするのは私たちなのだから、いくら納得いっていなかったといっても責任がありますし。

自分の心に正直になるべきだっていう反省があって、今でもそれは大事にしています。ちょっとした引っかかりを見過ごさないように、すごく意識していますね。

佐藤
すごく共感します。人間ってよく思われたい生き物だし、誰かが言った正しそうな意見の方になびいた方が楽だったり、体力を消耗しなくて済む。

だけどやっぱり、責任者になれば特にそうだと思うんですけど、ちょっとした違和感をちゃんと口に出す勇気って、すごく大事ですよね。常に意識していないとどうしても流されそうになってしまいます。

村田
めっちゃ分かります……!

佐藤
何より違和感に対して声をあげるときに辛いのは、自分の格好が悪くなるとかそういうことじゃないんですよね。自分の価値観を人前で晒さなくちゃいけないのが大変なんですよね。

もっと言うと、価値観なり美意識を作ったその背景の部分まで人前で晒さなきゃならないのは、とても体力を使う仕事だと思うんです。私も苦手だけど、責任感がそういうタイミングで発動して、自分の判断を口に出して言うんです。一石を投じて、さらなる議論を巻き起こさなきゃいけないシーンもある。

そういうきついことから逃げないでやってきて、なんとか会社を続けられているのかもしれません。

細く、長く。自分をすみっこに追い詰めない働き方。

佐藤
「きつい、辞めちゃいたい」って思うこともありますか。あるとしたら、どういうタイミングでその波がやってくるのか知りたいです。

村田
今は克服したんですけど、苦手なことをやっていると感じるとき、自分はこの仕事に向いていないから辞めたいと思ったことはありますね……。でも、なにか決定的なことがあるというよりは、すごく疲れているときには「辞めちゃいたい」ってなります。

半年くらい前にしんどくなったときは、1週間くらいお休みもしました。疲れ過ぎていて、判断ができないとか、改善策が思いつかないくらいまで思い詰めるのってよくない。

そうなってしまったときは、駒下にも「休んだら」って言われて休みました。私としては、週5出勤して働くのはとても疲れることなのに、そこに大変なことが重なるとどうしても思いつめてしまいます。しんどさが楽しさを上回ると弱気になる。

でも、こういう風に思うのは私だけじゃないってことが最近分かってきました。「水曜日の午前は寝たほうが効率上がりそう」と他のメンバーに言ってみたら、「めっちゃ分かる」って。午前休をもっと気軽に取れた方が自分のためにも会社のためにもなりそうなので、最近半休の制度を入れました。

佐藤
なるほど。自分をすみっこに追い詰めないのは、すごく大事ですよね。自分のコンディションをできるだけ一定に保とうとするのは、サービスを長くやっていきたい気持ちがあるんだろうと思うんです。

自分が主戦場に立ってやっていきたい、率いていきたいという願いはお持ちなんですか。

村田
そうですね。突発的に辞めたいと思っても、辞めたあとじゃあ次に何をするか聞かれても、心からいいと思っているラブグラフ以上のサービスが見つかりそうにないんです。

佐藤
そう思える、愛着が持てるサービスの肝ってどんな部分なんですか。

村田
そうですね、ありきたりなんですけど、ゲスト(お客様)の笑顔が見られることですね。変な言い方かもしれませんが、笑顔ってモチベーションのコスパがいいんです。

ラブグラフは写真のサービスなので、お客様の顔が見えるじゃないですか。めっちゃ笑っている!喜んでいる!みたいな。っていうのが普通に毎日見れるのが嬉しい。

カメラマンさんのこと「ラブグラファー」って呼んでいるんですが、「今日撮影に行ってきて、本当に楽しすぎてやばかった。今、写真をレタッチしているけど、みんなが幸せそうで泣けてきた」みたいなことを言っていて、それを見て私も泣くみたいなことが日常的に起こるんです。

笑顔とか幸せって連鎖すると思う。まずカップルやご家族が幸せそうなのがすてきだし、その様子を写真に撮るカメラマンもそれを分けてもらって、その写真を見て、全然知らない人も幸せになれる。サービスを提供している私たちも幸せになれる。どんどん広がっていくじゃないですか。

笑顔を見ると直感的に幸せになるってことに、私は救われている気がします。

後編は、村田さんから佐藤への質問から展開したお話をお届けします。もうすぐ30歳、とくに女性にとってはいろいろと意識せざるをえない年代に差しかかった村田さんに、佐藤がかける言葉とは。

前編「想いだけのヤツ」と「伝えるヤツ」のタッグは、No.1No.2の最適解?

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