「北欧、暮らしの道具店」トークイベントのロゴに込めた思い──デザイナーの思考プロセス【前編】

書き手 クラシコム 鈴木

「北欧、暮らしの道具店」トークイベントのロゴに込めた思い──デザイナーの思考プロセス【前編】
こんにちは。クラシコム・デザイナーの鈴木です。

クラシコムでは2018年5月26日(土)に表参道ヒルズ 本館B3F スペース オーで、400人のお客さまをお招きしたトークイベントを行いました。登壇者は写真家の中川正子さんと「北欧、暮らしの道具店」店長・佐藤で、トークテーマは「私らしさをつくるもの」。当日の様子はこちらに詳しくまとまっています。

デザイングループではこのイベントのトータルデザインを行いました。制作物は多岐にわたり、会場のレイアウトや舞台装飾のディレクション、ポスターやサイン、スタッフの着るユニフォームやお客さまにプレゼントするお土産など様々。

今回のエントリーでは、イベントのデザインプロセスを振り返り、そこで得た気づきをまとめたいと思います。

ロゴデザインを考える

デザインはイベントの3ヶ月ほど前から始めました。

イベントの運営メンバーは、普段お客さま係としてコミュニケーションの仕事をしているスタッフ2名が主幹となっていて、ここにデザイングループの2名が加わるという形でスタートしました。会場はすでに決まっていたので、まずは下見をし、出来ること・出来ないことを確認。

がらんとした会場。この時はまだ、どんな世界観を作るのか見えていませんでした。

客席のレイアウトや舞台はどう作るのかなど現実的な会場デザインも進めつつ、同時にイベントロゴを考え始めました。

イベントロゴといえば、クラシコムでは2017年10月に、「北欧、暮らしの道具店」の開店10周年を記念したイベントを行なったのですが、当初私たちの頭にあったのはその時のロゴでした。

10周年のイベントロゴ。お客さまにも好評で、スタッフが着ていたロゴTシャツを売ってほしいなんてお声もありました。

10周年の期間は2017年9月から1年間なので、今度開催するイベントもまだ10周年の期間中といえば期間中です。新しくロゴを作ったりせず、むしろこのロゴの色違いでいいのではと最初は考えました。5月なので爽やかにグリーンとかにしたら素敵かもしれません。

なかなかいい感じだし、これでいいかもしれないと考えました。

ですがそんなに甘くないのがロゴデザイン。

 

作りたいのは、世界観を表すロゴ

この時私たちの中には、「お客さまに喜んでもらいたい!」という強い思いはあったものの、具体的なイベントのコンセプトは定まっておらず企画自体はフワフワしていました。

そこで「どんなイベントにしたいのか」を運営チームで言語化することに。

お客さまが普段どのような気持ちを抱えていて、イベントに参加することで気持ちにどのような変化があって欲しいのか。その為に、どのような体験を届けたいのか。こうして話し合いを重ね、コンセプトが固まってきました。

「忙しい毎日のなかで、自分らしさを取り戻せたようなひとさじの非日常」

これが今回のイベントのコンセプトとなりました。

そして打ち出したい世界観は、高揚感が感じられるような非日常感。イベントの時間帯も夜にして、お客さまが「自分のための時間」と感じられるような大人っぽい世界観にしようというビジョンも見えてきました。

となれば、先にあげた10周年のロゴはイメージと違います。10周年のイベントは、会場全体が明るくて白っぽくナチュラルな雰囲気で、ロゴもどちらかといえば可愛らしいものでした。色を変えてみたところで、今回打ち出したいイメージである、大人っぽさや非日常の高揚感は表現出来ていません。

こうして、今回のイベントの世界観を表すロゴを新たに考えはじめました。

 

会場デザインとリンクしたロゴにしたい

まず、イベントのタイトルは「FIKA NIGHT」に決定。次に、ロゴデザインの案出しを始めました。

ちなみに「FIKA NIGHT」は、スウェーデン語のFIKA(フィーカ)=「お茶の時間」にNIGHTを加えた造語です。

会場デザインも同時に考えていたのですが、非日常の空間を目指して、夜の野外パーティーのような演出ができる、電飾のガーランドを使うアイデアが出ていました。

そこでロゴもガーランドをモチーフに考えてみました。

夜をイメージするネイビーをキーカラーに、白でロゴが入るイメージで、色々なバリエーションを考えました。

出した案の一部。

 

お店ロゴとイベントロゴの関係性

色々ロゴを考えているうちに、気にかかることが出てきました。いつも使っている当店のロゴをどう扱うかという問題です。

「北欧、暮らしの道具店」サイトトップに使われているこのロゴは、いわばお店の顔です。

今回のイベントは「北欧、暮らしの道具店」のイベントです。このロゴもどこかに入っていた方がいいかもしれません。

試しにこんな風に並べてみました。

【ダメポイント1:何が主役かわからない】
なんだかどちらも主張が激しくて、とっ散らかった印象です。

そこでお店のロゴを小さくしてみます。Fika Nightの文字も、手書きっぽさから洗練させて、もう少し整った書体にしました。

【ダメポイント2:要素が多い】
大きさに差をつけたのでどちらが主役かははっきりしましたが、絵っぽい要素が、「家」というモチーフと、「ガーランド」というモチーフ2つあるのが気になります。状況にもよりますが、ロゴは「絵っぽい要素が1つ」+「文字要素」ぐらいシンプルにした方が強くなりそうです。

いっそのこと、お店のロゴはやめて打ち文字にしてみましょう。

こうしてみると、バランスはよくなりました。ただ、気になることが一つ。

【惜しいポイント:「北欧、暮らしの道具店」の存在感の薄さ】
ぱっと見て、どこが主催なのかが分かりません。

そこで今度は主役をお店ロゴにしてみました。

お店のロゴを目立たせる為に、FIKA NIGHTはシンプルな書体にしてバランスを良くしました。

【ダメポイント3:いつものロゴとほとんど変わらない】
夜の高揚感はどこへ…?

一体型にするという案もありました!

【ダメポイント4:要素が複雑】
なんだかごちゃごちゃしてますね。HOKUOH〜の文字なんて小さくてミミズみたいです。

 

そもそもロゴに求められている役割とは?

よく解らなくなってきたところで、一回整理することにしました。

大事にすべきなのは「FIKA NIGHT」なのか、「北欧、暮らしの道具店」なのか?
そしてもう一度、原点に戻りました。

そもそもお客さまはどうしてこのイベントに来てくださるのか?
何に期待して、わざわざ表参道まで足を運んでくださるのか?

もちろん、ゲストにお呼びしている写真家の中川正子さんのお話を目的にされている方も大勢いらっしゃると思います。ですが普段Webで「北欧、暮らしの道具店」を見てくださっているお客様にとっては、きっとお店の世界観をリアルに感じ取りたいという気持ちがあるのではと考えました。

お客さまは「FIKA NIGHTだから」来てくださる訳ではなくて、
「北欧、暮らしの道具店のイベントだから」来てくださる。

だからお店がWebの世界から表参道に飛び出してきたとしても、いつものロゴで迎えた方が、喜ばれるのではないか。

それにお客さまがイベント当日のことをSNSでシェアしたいと思った時、「FIKA NIGHTに来ました!」ではなくて「北欧、暮らしの道具店のイベントに来ました!」と伝えたいのではないかと考えました。

こうして、今回のイベントのロゴは、「北欧、暮らしの道具店」のロゴをメインにすることになりました。

あくまでロゴの見た目はいつものロゴの延長線上です。

そこにガーランドの飾りをつけて夜っぽさを演出すれば、「北欧、暮らしの道具店」ということも一目でわかるし、いつもとちょっと違う、特別感も出せると考えました。

 

ブラッシュアップ

だいたいの形が決まったので、ここからは一気にブラッシュアップします。ロゴにガーランドをつけると言っても、付け方のバリエーションは色々考えられました。

ごちゃごちゃしすぎず、シンプルで、電飾ガーランドだということが分かる付け方を研究。

そして、こちらのロゴに決まりました。

結局、パッと見た感じ最初のガーランドのつき方とほとんど変わりませんが、「最初にやったものが一番良かった」というのはデザインあるあるです。あらゆるパターンを検証することで新たな発見に出会うこともあるので、こういうプロセスは大切にしています。

 

そして迎えた当日・・・

私(右)も会場に入り、舞台装飾など最後のバランスチェック。

こんな感じになりました!

一緒にデザインを考えた、デザイングループのマネージャー佐藤と。

判断の基準になることは、いつだって同じ

今回のイベントでデザインを決める時に、何を優先したらいいのか迷うことが多々ありました。一方を優先させると、一方が弱くなるし、デザインとはむしろ優劣をつけることによって、分かりやすくするという面があります。

優劣の付け方に迷った時の答えはいつも私たちがお客さまに何を提供したいのかというところにありました。

イベントを楽しみにしてくれているお客様に、どのような気持ちになって欲しいのか。どのような体験を届けたいのか。

そういうことを考えるのは普段の仕事でも同じはずですが、より一層深く考えたのが今回のイベントであり、私にとってとても良い気づきになったのでした。

イベントロゴはお客さまのSNSにも沢山上がっていて、とっても嬉しかったです。

以上、前編では、ロゴができるまでのプロセスをまとめました。後編では、このロゴを使ったスタッフTシャツの制作プロセスについてまとめております

*イベント写真 木村文平(最後から2番目を除く)

 

*クラシコムでは現在、デザイナーを募集しております。

詳しくは以下「詳細を見る」よりご覧ください。

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