働く勇気が湧いてくる30通りの「じゃない」働き方。クラシコムジャーナルを振り返って。

書き手 編集スタッフ 馬居

働く勇気が湧いてくる30通りの「じゃない」働き方。クラシコムジャーナルを振り返って。
クラシコムジャーナルは、「フィットするビジネスを考えるコーポレートメディア」として、2016年11月に公開しました。

クラシコムが「北欧、暮らしの道具店」で、“フィットする「暮らし」”を追求して10年。今度は、暮らしの多くを占めている「仕事」も、もっと着心地のいい、お気にいりのシャツのように、自分に“フィットしている”と感じられるようになれないだろうか。

そんな思いでインタビューや対談を重ね、これまで30組以上の方にお話をうかがってきました。

その中で、一つ気付いたのは、私たちが素敵だと感じる方々のお話には、たくさんの共通点があるということ。

そこで今回は、クラシコムジャーナルで編集・ライティングをしている3名が集まり、振り返りをしてみることにしました。

いいなと思う働き方の共通点とは?「フィットするビジネス」のキーワードって何だろう。そして、それをクラシコムジャーナルは今後、どのように伝えていくことができるんだろう。そんなことを考えてみました。

クラシコムジャーナル 編集チーム

中央・馬居優子
クラシコムジャーナル の編集とライティングを担当。IT企業で10年間務めた後、現在はフリーのウェブディレクターとして働きながらクラシコムジャーナル の編集をしています。自己紹介はこちら

左・小野民
馬居の産休中にジョイン。山梨県在住で、週に1回東京にやってくるフリーライター。紙とウェブのお仕事は半分ずつ。地方での働き方や食べ物にまつわる仕事が多いです。自己紹介はこちら

右・長谷川賢人
元クラシコム社員。現在は主にウェブメディアでフリーランスのライターや編集者として活動。中学生の時から、趣味のインターネットラジオでしゃべっている。今でもインタビューは編集よりも取材の方が大好きです。

強くなるんじゃない。弱いままで勝つ方法が知りたい。

長谷川
クラシコムジャーナルは、基本的に「じゃないほう」をよく考えてきましたよね。勝つには強くあらねばならない、ではなくて、弱いまま勝てないかな、とか。「ハードに働かないといけない?」と疑ったり、既存のマネジメントじゃない方法での勝ち方を考えたり。

馬居
おもちゃクリエイター高橋晋平さんとの対談はまさにテーマが「弱いままで勝つ」でしたよね。体の弱かった高橋さんが身につけた弱さを武器にした戦い方のお話はとても面白かったです。

漫画家ユニット「うめ」の小沢高広さんとの対談でのドラえもんの「ジャイアン」の生き方って大変そうだよね、という話も繋がるかなと思います。強くあるのも、強く見せ続けるのも大変だし、そういう戦い方が向いてない人もいるよねという。だからって、勝ちたくないわけじゃないし、そうじゃなくても勝つ方法はある!

小野さんの旦那様で発酵デザイナーの小倉ヒラクさんとの対談でも、何か権威のようなものを持っているわけではない、正統派じゃないからアプローチの仕方を考えるというお話がありましたよね。

小野
そうですね。彼も本当に体が弱いですし、あとは集団生活に向いてないですし…、それでも生き残る術を考えている人なので、そういう発言になったのかなと思います。

メインストリームじゃないところで働いている人たちの事例を掘り下げることで、いろんな生き方ができるんだよっていうことを見せたいメディアですよね。

ネットの弱いが勝ち文化が働き方も変える?

長谷川
正統派じゃない、といえば、デイリーポータルZ編集長の林雄司さんとの対談もまさにそうで。今となってはインターネットメディアに、出版社や新聞社、テレビ局などのいわゆる「コンテンツのプロ」が参入してきましたけど、そもそもインターネットの歴史はメインストリームじゃないところから発生してきているわけですよね。芸能人でもない普通の人がすごく面白いことを言っていたり、ブログで世にいる人の暮らしを覗けるみたいなことにワクワクして。

その点では、デイリーポータルZを15年間も続けてこられた理由として、「素人感にプロ意識を持つ」という言葉が出たのは印象的でした。

馬居
ライターのヨッピーさんは、インターネットでは弱い方が強いとおっしゃってましたね。そして、インターネットの記事は、いかに読者との距離を縮めるかということが大切だと。

読者に目線を合わせるということについては、雑誌の編集長さんのお話でもみなさん考えてらっしゃるように思いました。『和樂』の高木編集長は、「日本美術の民主化」と掲げて、高尚で少し近寄りがたい日本のアートを、もっと一般の人にも親しみやすいかたちで伝える雑誌にしたいとおっしゃっていました。

インターネットのメインストリームじゃないものが力を持つという文化が、メディア全体のあり方を変えてきたのかもしれないですよね。

そして、その話は、私たちがお話を聞いている今はいわゆるメインストリーム・正統派ではない人たちの仕事が、これから社会全体に影響を与えていくんじゃないか、という希望につながるのかも。

長谷川
正統派じゃないからできることってありますよね。

馬居
一方、元WIRED編集長の若林恵さんは「読者は見ない」と断言されていましたね。自分の中の読み手や、社会と対話すると。若林さんとの対談は、ちょっとびっくりするくらいたくさんの方に読んでいただきました。この記事は、なぜ、あんなに広がったんでしょう…?

長谷川
お話の面白さはもちろん、構成の狙いが当たった!という事例かなと思っています。前編ではネットで文章を書く人、あるいは書きたいと思っている人たちが反応するように、「文章が下手な人は『書けない』のではなく『読めない』のだ」という若林さんの発言を早々に持ってきました。その部分をコピーしたらすぐツイートできるように文字数も計算して。

小野
最近、文章を書けるようになりたいとか、ライターになりたいっていう人多いですよね。ウェブメディアも沢山ありますし。

長谷川
そうですよね。だから、そういう方向けに、上手な書き方の情報って結構あると思うんですけど、読み方に言及されることことってあまりない。あの話は僕も価値観がひっくり返りましたね。とはいえ、そのフレーズが強かっただけじゃなくて、若林さんと青木さんの会話がとにかくすごく面白かった…!

馬居
言葉は厳しいものも多かったですけど、でも最終的には、編集者やライターにとって希望の話でしたよね。

自分にフィットする働き方は、自分にしか作れない

馬居
編集といえば、「北欧、暮らしの道具店」の編集チームの記事も出しましたね。

私自身はクラシコム社員ではないので、どちらかというと「北欧、暮らしの道具店」の顧客の一人として見てしまうのですが、実際取材をしてみると想像よりもクラシコムの中の人たちは全然ほっこりしていなくていつもびっくりします(笑)

実際、クラシコムの社員として働いていた長谷川さんが一番わかることだとは思いますけど。

長谷川
クラシコムの人たちは、たしかに「ほっこり」はしてない(笑)。社員のみなさんは自分たちらしい「理想のあり方」が胸にあって、そこへ向かうエネルギーが強い人たちが集まっているから、そう感じるんじゃないですかね。

馬居
『オズマガジン』の元編集長(現:オズマガジン統括編集長) 古川誠さんが、編集部の作り方について、ただ一生懸命頑張ればいいんだと信じられる環境をつくりたいとおっしゃっていて。ここで頑張ってもいいんだと思える場所って大切ですよね。

私はもっと頑張れるはずなんだけど、でもここでは頑張れない…という時は辛いですし。

クラシコムの人たちは、今クラシコムがフィットしているから頑張れているという人が多いのかもしれないですね。頑張れる場所にいるというか。

長谷川
頑張れる場所、いいですよね。

建築コミュニケーターの田中元子さんは、「世の中は受動機会が多すぎて、能動機会が減っていること」が問題だとおっしゃっていたんです。頑張ろう、何かしようと思っても、それをする機会がない。田中さんが手がける「喫茶ランドリー」は、手芸やミシン、それから友達との交流など、何でもよいので「自分から何かしたい!」ってクリエイティビティを発揮できる機会が訪れたときに、その能動機会を後押しする場所になっていると。

社会の接点の中に、いかに能動的に自分の居場所を作るかということは、ある種の生きている価値を作ることなのではといったことも感じました。

馬居
素敵ですね。今の場所では頑張れない人も、きっと頑張れる場所は作れるっていう希望。

長谷川
「フィットする場所がない!」じゃなくて、「自分たちでフィットする場所を作るんだ」ということですよね。それを、暮らしやライフスタイルのなかで実現させようとしているのが「北欧、暮らしの道具店」であると思うので、同じことを仕事でも成り立たせることはできないのかをクラシコムジャーナルでは追いたい。

小野
それがいろんな業界で実現されている、となれば、とっても勇気付けられますよね。

働く私たちが、本当に今読みたいものって?

長谷川
たしかにクラシコムジャーナルの取材をしていると、仕事のジャンルは違っても、「自分もこうありたいな」と自信が持てるようになることが多くて。

馬居
わかります。

私はダイレクトに3人目の子供が産まれたばかりのときに、3人のお子さんがいらっしゃる漫画家のおかざき真里さんに会いに行って、ああ、私も頑張ろうと思いました。

おかざきさんもそうですが、クラシコムジャーナル では、お子さんをお持ちの女性にもたくさん出ていただきましたが、みなさん、子育てが大変だ!とは過剰にはおっしゃられないですね。それよりも、仕事も子育てもやる方法あるから!っていうスタンスというか。

小野
きっと、私たち、そう言ってくれるだろうという人に話を聞きにいっていますよね。

馬居
あ、そうかもしれない。

小野
「北欧、暮らしの道具店」の編集テーマは、自分が書きたいものでも、読者が読みたいものでもなく、「自分が読みたいもの」を書くということだと思うんですが、クラシコムジャーナル も同じですよね。

馬居さんも私も子育てしながら働いててそれに悩んだりもしつつ、仕事も両方頑張りたいと思ってるから、そういう記事を読みたいって思う。

馬居
たしかに。読みたいものを言ってくれるだろうという方に聞きに行っていますね。

小野
とくに女性の働き方っていうところでは意識しますね。

私、初めにクラシコムジャーナル で書きませんかと誘われた時、ビジネスにあまり興味がないから大丈夫かなと思っていたんです。

でも、実際取材をしてみると、みなさん単に数字や売上を考えているのではなくて、それぞれの哲学を噛み砕いて実践されているのが面白くて。ああ、誰でもビジネスの話をしていいんだ、誰でも小さいことから思い描いてもいいんだ、ビジネスにしていいんだ、と勇気をもらうことが多いです。

長谷川
日本のビジネス社会は、まだ男性主導なところが多くて、ビジネスメディアもそうじゃないかと思うんです。でも、小野さんのようにビジネスに興味がない女性でも、クラシコムジャーナルは面白いメディアだと感じられるのはいいですよね。

馬居
特に、佐藤さんの対談記事は、女性にとってすごく面白いものだと思います。何が面白いって、佐藤さんの考えがどんどん変わっていくことで。『リンネル』『大人のおしゃれ手帖』の編集長 西山千香子さんとの対談では、人に任せることが苦手で、全てに口出しをしてしまうということだったんですが、その後の対談では任せるようになってきたと話されてたり。

佐藤さん自身も試行錯誤したり、悩んだりしている姿を後輩に見せたいって。私はそれってすごく勇気になるなと思うんです。なかなか女性の先輩が、試行錯誤や自身の変化を見せてくれることってないですよね。

小野
たしかに。上司が悩みなくずんずん進んでいるようにに見えるから、あの人みたいにはなれないとか、なりたくないとか感じて、会社をやめちゃったりしますよね。

馬居
そうですよね。でも、実際自分が歳を重ねていくと、毎日悩んでるし。でも、30歳でも40歳でもその先も、ずっと変わっていける、成長していけるんだっていうのが、佐藤さんをみていると感じられて。

そんな風に、女性が働く上で本当に見たいものを見せていけるといいですよね。

長谷川
「女性が女性らしく働くにはどうしたらいいのか」を発信するって、ぼくは詳しくは語れませんが、きっと平塚らいてうなどの婦人活動家たちも考えていたはず。そして、たとえば『青鞜』という雑誌が生まれた。そういう「声」や「アイデア」をひとまとまりにして気付きを与えるという意味では、クラシコムジャーナルも働く女性たちを後押しできるかもしれない。

小野
意外と話通じるかもしれないですね、今ここにらいてうさん呼んでも。

馬居
まだその話してたのーって言われちゃうかも。

小野
進歩してないわねって。分かり合えちゃうかもしれない。

普通の人がフィットする仕事ができる社会に

小野
クラシコムジャーナルは、青木さん、佐藤さん、そして私たちライターがよく知ってる人に取材することが多いのも特徴ですよね。例えば私は夫の対談を編集してますけど、青木さんの対談はもともと知り合いの方も多くて。だからこそより深く伝えられているのかなと。

例えば、私が担当した「五味醤油」の五味仁さんとの対談なんですけど、五味さんて相槌打つときにこういう風に手をポンッてするんです。

馬居
あ、あった(笑)

小野
カメラマンもよく知っている方なので、うまく撮れました(笑)

馬居
インタビューって、怖いくらいに編集で内容が変わりますよね。

もしかしたらもっと面白く伝えられるのかもと思っても、それよりもインタビューを受けてくださった方が悪く見えることの恐ろしさの方が先に立ってしまうこともあります。もちろん面白くて、誤解を与えない記事がベストだとは思いますが。

ですから、なるべくなら私自身だったり、青木さんや佐藤さんがもともと関係のある方の方が、理解を深めてから書けるので安心します。インターネットの記事って、思ったよりずっと残りますし。

小野
そうですよね。私も、取材された人が、自分はこういう人ですって言いたくなる記事にしたいなと思っています。

この人のこういう素敵なところを伝えたい、という目で編集するメディアがあるのもすごくいいことだなと思うんですよね。その考え方だから、経営陣の青木さんや佐藤さんだけじゃなく、「北欧、暮らしの道具店」編集部の話だったり、GMOペパボの杉村文美さんとクラシコム社員さんの対談だったりをコンテンツにできていて、そういうことに可能性を感じますね。

馬居
普通の人がフィットする仕事ができる社会になってもらいたいし、普通の人の話も出していきたいですよね。

クラシコムジャーナル最初の青木さんと佐藤さんの対談記事で出た、「介護や子育てといった、誰にも起こりうる『人生の変化』が仕事に影響しない仕組みを作りたい」というのがまさにそうで、クラシコムはそうあってほしいし、そういう会社がどんどん増えて、そこで働く人の話を聞いてみたいです。

長谷川
普通の人の話って、案外、大切ですもんね。それと、やっぱり元が「北欧、暮らしの道具店」だというのもあって、他所を争ったり、誰かを煽ったりする論調にならないのもいいな、と思います。

馬居
私、初めてクラシコムジャーナルに自分の自己紹介を書いた時に、想像していたよりも文章が柔らかい印象になって驚いたんですよね。それは、きっとデザインやフォントによるところも多いとは思うのですが、「北欧、暮らしの道具店」で作ってきた世界観を引っ張ってきているかなと。

ですから、他のメディアでは、ちょっと尖った伝え方をされる人でも、クラシコムジャーナルでは少し柔らかくというか、素直に見えるといいな、と思ったりはしますね。

長谷川
場の力が効くといいですよね。

馬居
それは守っていきたいところです。

日本の働き方に飛び道具的な発想を!

長谷川
さて、最後に今後どうしていきたいか、とか話しましょうか。

馬居
まとめですね。どうしましょうか。

長谷川
外国の方のお話は聞いてみたいですよね。

小野
いいですね。私も、最近Netflixで海外ドキュメタリーをよく観るんですけど、海外の価値観に触れるっていうのは、自分の世界がわかりやすく開かれる感じがあります。

馬居
私は、「オランダ人は夕飯にポテトフライだけ食べる。」というのをテレビで見て、子供たちのご飯づくりでくじけそうになると思い出すようにしてるんです。いま直面してる課題に対して、そういう飛び道具的な解決策は出てきそうですよね。

長谷川
逆に、日本では当たり前のことが、実は他の国では実現できないことなんだ、みたいな話も面白そう。

馬居
では、クラシコムジャーナルはこれからグローバル化して行くということで。

よし、それでは、これからも、頑張っていきましょうね。今日はありがとうございました!

長谷川・小野
ありがとうございました!

どのインタビューも思い入れが強く、話が尽きない振り返り会となりました。興味のある記事がありましたら、ぜひ読んでみてくださいね。

クラシコムジャーナル インタビュー・対談

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