とんでもなく大きな夢が組織をひとつにする。愚者風リーダーシップのすすめ。組織開発ファシリテーター長尾彰×クラシコム代表・青木耕平×人事・筒井あい子 後編

書き手 編集スタッフ 馬居

とんでもなく大きな夢が組織をひとつにする。愚者風リーダーシップのすすめ。組織開発ファシリテーター長尾彰×クラシコム代表・青木耕平×人事・筒井あい子 後編
創業10年目を機に、クラシコムに「エア社員」としてジョインした組織開発ファシリテーターの長尾彰さんを囲んでの鼎談後編です。

前編では、これからの10年に向けて組織をさらに強くするために、まずは、社員一人ひとりの強み・弱みを再認識したこの1年間の取り組みを振り返りました。後編は、さらにクラシコムに関わらず、どういうリーダーがチームを幸せにするのかという話に展開しました。

キーワードは「愚者風リーダーシップ」。

自分は足りないものが多いからリーダーには向いてない…。 うちのリーダーはどうしようもなくて困る!

そんな気持ちを抱いたことがある方は、ちょっとリーダーに対する意識が変わるかもしれませんよ。

リーダーは「賢者」じゃなくてもいい?

クラシコム人事・筒井(以下 人事・筒井)
青木さんが、どうしても代表として自分が全部決めないといけないと思ってしまうとか、みんなを頼れない、というところから抜け出せないっていうの、みんなもそうだと思うんです。

誰でも大なり小なり、賢い自分であらねばならない、ありたいとか、強い自分でありたい、そう見られたいみたいな呪縛に絶対かかってると思っていて。

長尾さんの著書「宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。」にもありましたよね。賢者風リーダーシップと愚者(ぐしゃ)風リーダーシップのお話で。

長尾
賢者風リーダーは、いわゆる優等生タイプのリーダー。愚者風は、一見すると優秀な人物に見えないタイプのリーダー。みんな賢者風リーダーになりたいと思うけど、愚者風リーダーでもいいんだよという。

そして
賢者風賢者(けんじゃふう けんじゃ)
賢者風愚者(けんじゃふう ぐしゃ)
愚者風賢者(ぐしゃふう けんじゃ)
愚者風愚者(ぐしゃふう ぐしゃ)
があると思っていて。

賢者風賢者っていうのは、マザーテレサとかガンジーっていう最高レベルで、なんかこう、もう僕はちかづけない、恐れ多い、こりゃすごい、という感じ。

賢者風愚者っていうのは、ちょっとせつない感じで、僕自身はここを追い求めてしまってるところがあって、そんな自分を解放したくてこの本を書いたところもあります。こう見えて僕、意識高い系な賢者風愚者なんです…。そんな力まなくてもいいってわかっちゃいるんだけど。

僕が好きなのは、愚者風な賢者。『宇宙兄弟』の主人公ムッタがそうです。僕にとって魅力があるひとって愚者風な賢者が多いよなあって思っていて。

といいながら、実は僕が一番憧れているのは愚者風愚者でもあって。ジミー大西さんみたいな、完全に天から授かったギフトと周囲からのサポートで生きてるような。社会性とか関係なく、本能にしたがってただただ生きてるように見えるから、みんながあの人は大事な人だ、だから守ってあげよう、ってなる感じ。自我が見えないというか。

クラシコム代表・青木(以下、代表・青木)
自我の喪失は難しいよね。愚者風リーダーになるのも難しい。

長尾
難しいです。みんな愚かな自分に向き合うことを恐れるから。

人事・筒井
特にクラシコムって、賢者の道を歩んできてる人たちが多いかもしれないですね。愚者に対して恐れを抱いてたりも。

代表・青木
みんなちゃんとしてるからね…。どうしたら愚者風になれるんだろう。

愚者になる最も簡単な方法とは…。

長尾
一方で愚者風になるためにはコツがあるんじゃないかと思っています。それは何かというと「ものすごく壮大な夢を持つ」ということです。宇宙兄弟のムッタの「宇宙飛行士になる」っていう夢がまさにそうです。

人々が協力とか協働を始める仕組みっていうのはきわめてシンプルで、みんなが困ったとき、共通の敵が現れたとき、それから夢が共有できたとき。映画でもそうだけど、宇宙人がきたら、アメリカもロシアもみんなで協力するし。ゾンビが現れれば、犯罪者も警察官も協力し始める。

でも大きな夢って人に語るのは恥ずかしい。例えば、クラシコムの50人で一千億円のビジネスをやりたいとか。

代表・青木
僕は、それ、言えない!

長尾
そんな会社なかなかないし、50人で一千億とか無理だからって社長自身が思っちゃう。

代表・青木
僕の中の賢者が…

人事・筒井
邪魔するんですね。

代表・青木
でも、たしかに壮大な夢の前では、誰でも愚者たらざるをえない。

長尾
たらざるをえない、そのとおり。

代表・青木
その夢に相対して自分の小ちゃさ具合で、愚者たらざるをえない状況になるしかないんだよね。

人事・筒井
そういうことですね。

長尾
マザーテレサも、ガンジーも、結果的に賢者の最高峰になったけど、途中は愚者風賢者だったと思うんですよね。

マザーテレサは、夢でイエス様が「インドに行って困っている人を助けろ」と言ってたから行ってくる!とか。ガンジーも弁護士として生きてれば困ること何もなかったのに…。

代表・青木
なるほど、愚者のメカニズムって、行いに対しての愚者ってことなのか。どんな愚者も、向かってることのレベルを下げれば当然賢者になる。たとえば家の整理整頓ぐらいまでの現実的なところにフォーカスすれば、多くの人は賢者になるし。

でも向かってることの大きさを相対的に大きくして、自分の閾値をある程度超えたら愚者でしかないみたいな。でも、怖いなあ。

長尾
自分の閾値超えるのは怖いですよね。未知の自分だから。未だ知らない自分に出会わなくてはならない。

代表・青木
僕は、とにかくできそうもないことを言うのものがすごく嫌なの。もうね震えるくらい嫌なの。言いたくない!言わないぞ!って。

長尾
それは、コンフォートゾーンって言葉で表現することができると思う。コンフォートゾーン超えるのはね、怖いんですよ。変わらなくちゃいけないから。今までの自分では通用しないから。

人事・筒井
実現できそうもない大きなことを言って、本当にできなかったら…という怖さもありますね。

長尾
いいことなんて何にもない。でも一回閾値超えてしまうとゾーンが広くなる。ちょっとずつちょっとずつストレッチしていくと、コンフォートゾーンが広がる。

愚者風リーダーシップは他人に委ねることから

長尾
青木さんは、特に人に委ねてこなかったから、「人に委ねる自分」が未知の領域。そのコンフォートゾーンを超えるのは大変。

代表・青木
よく妹に、お兄ちゃんてほんと最終的には誰にも身を委ねてないよねって言われる。

でも、それが長尾さんが来てくれて、自分の強み・弱みをわかったことで、この1年でちょっとずつ変わってきて、みんなを頼っても良いんだって思うようになってきていて。(前編参照

あとは、長尾さんて、僕では耐えられないような状況でも、じっと見てるときあるじゃない。アキラスタイル。

人事・筒井
ありますね。言わない、説明しない、ぐちゃぐちゃになってても見てるずっと。口出しせず。どうなるのかなあって見てる、アキラスタイル。

代表・青木
そのスタイルを見て、僕もちょっと真似してみようじゃないけど、一瞬ちょっと見てみようみたいなことをすると、ああ、結構なんとかなるんだなあって。

長尾さんといると、いつの間にかコンフォートゾーンを勝手に広げられてる感じがするんだよね。変なことするから。月に2回、長尾さんがクラシコムにくる時は、必ず最初に1時間雑談をすることにしてるでしょ。その限られた時間の中で、15分間ひとりでどうでもいい話をしたりする。

人事・筒井
この間は、ずっと奥歯を抜いた話してましたよね。

長尾
僕にとってはどうでもよくなかったんだよ(笑)親知らずを抜いたのがあまりに衝撃的だったので…。人生観が変わるような。

代表・青木
普通なら、みんなの流れとか意識して、僕は今しゃべったから、次筒井さんのターンで、とか考えるけど、15分間ひとりで話し続ける。それを見たら、もうじゃあ、僕も最初から最後まで自分のこと話しちゃうからな!とか思っちゃったり。これは、長尾さんに愚者風リーダーシップ発揮されちゃってるんだな。

長尾
それは意図していたわけじゃないですけどね(笑)

リーダーが愚者になれば、みんなが自由とやりがいを手に入れる

代表・青木
それで、思い出したんだけど、昔自分が違う会社で働いていた時に、正解を教えてくれて、頼りになって、そういうリーダの下で仕事してたときよりも、頼りになるのは頼りになるんだけど、抜け漏れもすごく多くて、今思えば言うこともでかくて、でかいけど全然実行が伴ってないみたいなリーダーの下で働いてるときがすごく幸せだったんだよね。

当時は、ほんとに苦労させられてるって思ってたけど、今振り返るとめちゃめちゃ機能してる実感があったし、ここにいていいんだろうかって微塵も感じたことがない。というか、俺がいないとまじどうなるのみたいな感じで働いてたし。だから、今思えば、すごく幸せで。

だけど、僕の今のリーダーシップは、どちらかといえば、「これをやろう。そのためにはAとBとCが必要。じゃあ、君はAをやって、君はBをやって、ここまでやってくれたら嬉しいけど、最悪僕が引き取るから」って、全て決めてしまう感じのマネジメントで。

これは、もしかしたら、不幸にしてたまでは言わないけど、その上をいく幸せを実感させるチャンスを奪ってたかもしれない。

僕も雑に投げていいならそのほうが楽だし。本当は、そういう細かいマネジメントじゃなくて、僕が得意なのは、ふわふわしたなにか、素敵なチョウチョを追いかけるみたいなことのほうが向いてるのかもしれなくて。

人事・筒井
チョウチョ(笑)

代表・青木
いるかもわかんないチョウチョを捕まえろっていったみたり、そうかと思えば、カブトムシ取りに行っちゃった!とかして、みんながぷるぷる怒ってたり。でも、怒って仕事してるときって、自分はここにいていいんだとか、自分は成長してるんだって、そういう面倒くさいこと考えないじゃないですか。そういうのは、愚者風リーダーシップなんだろうね。

僕がそうなることで、みんなももっと色んな動機を持ちやすくなるかもしれない。僕も実はチョウチョを追いかけたかったんです、とか。

長尾
誰もが自分の中に賢者と愚者の側面をもってると思う。

代表・青木
愚者を解放できるっていうか。

人事・筒井
でも、そんな風に、ありたいようにあって、それでまわりに迷惑かけたり失敗したら、もう逃げ道ないじゃないですか。

長尾
周りが助けてくれるから大丈夫。

代表・青木
賢者風にならなければね。賢者風だと、こいつ賢者のように見えるのに本当はダメだなってなるけど、愚者風であれば助けやすくなるよね。

長尾
マザーテレサもガンジーも、今知られているような活動を始めたのは40歳を超えてからで。それまでは賢者風を装ってたのかも。どこかで、賢者風はもうできないって糸が切れちゃったのかな。

代表・青木
歳をとれば自意識が薄れて、愚者風になれるのかもしれない。

長尾
長老型っていったらいいんでしょうかね。

代表・青木
愚者的長老?

というところで、そろそろお時間ですね。

長尾さんとの取り組みは、まだまだ始まったばかりですし、これからクラシコムという会社がどうなっていくか全然わからないけど…。

長尾
でも、確実に変わっていますし、変わっていきますよ。

人事・筒井
そうですね。この先の変化がとても楽しみです。

代表・青木
がんばりましょう。これからもよろしくお願いいたいします!今日はありがとうございました。


これからのクラシコムの変化にご期待下さい!

前編「みんな凸凹があるから面白い!次の10年に向けた組織づくり始めました。

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