「北欧、暮らしの道具店」による、商品の購買につながる共感プロセスのつくりかた

広告コミュニケーションを変えるのは「タモリ」と「ありがとう」──北欧、暮らしの道具店が考える、企業と読者の良い関係

書き手 長谷川 賢人

写真 廣田 達也

広告コミュニケーションを変えるのは「タモリ」と「ありがとう」──北欧、暮らしの道具店が考える、企業と読者の良い関係

2016年10月6日(木)に南青山の宣伝会議セミナールームにて、『「北欧、暮らしの道具店」による、商品の購買につながる共感プロセスのつくりかた』と題し、クラシコム代表の青木耕平が講演を行いました。

わたしたちがクライアント企業さまのご依頼で制作するスポンサードコンテンツ「BRAND NOTE(ブランドノート)」の事例をもとに、どのような心がけでお客さまと接しているか、またそのやり取りから考えた「成果につながるポイント」とは何かをお伝えしました。

前後編にて代表青木の講演録を抜粋してお届けしています。(前編では、クラシコムが大切にしている「広告コミュニケーションの4つのポイント」の1つ目をお伝えしましたが、後編では残りの3つをまとめていきます。

クラシコムが考える「広告コミュニケーションの4つのポイント」

1.広告ではなく「紹介」という意識をもつ(前編で説明しています)

2.信頼される「聞き役」になる

3.本当を面白く伝える

4.お礼を言われる広告を目指す

2.信頼される「聞き役」になる

2つ目は、信頼される「聞き役」になる、ということです。 さまざまなクライアントにお話を聞くと、わたしたちのようにメディアをつくっている人間からすれば、コンテンツになる潜在的なエピソードがいっぱいあります。たとえば、担当者の商品開発へ懸けた熱意とか、読者と同じような趣味や趣向を持った社員さんが開発に携わったとか。 わたしたちとしては「その点をもっとアピールすればいいのに」と思うのですが、そうもいかない事情があるとわかってきました。トップブランドやナショナルブランドと呼ばれる会社だからこその悩み……僕はこれを「巨人の悩み」と呼んでいます。

一般の消費者にそのまま話しかけても、巨人であるがゆえに声が届きにくく、共感を呼べず、言葉も響かない。認知を大きくして成功を目指す巨人ならではの難しさが、現実には存在しているのですね。

では、どうすれば巨人は、親しみをもって話を聞いてもらえるのでしょうか?

ひとつ、たとえ話をしてみましょう。巨人のような存在でもあり、とても偉い人……日本の総理大臣、今でいえば安倍晋三さんですね。安倍総理が国民に耳を傾けてもらい、支持率を上げるためには、2つのコミュケーション方法があると考えられます。

まずは、ステートメントを明らかにして国民から“理解を得る”ための「演説的コミュニケーション」。もうひとつは、パーソナルな部分や苦労話を伝えて、“共感や親近感を得る”ための「談話的コミュケーション」です。ただ、談話的なコミュニケーションには難しさがつきものです。興味のない人に向けて、安倍総理がいきなり「自分は妻とふだんこんな休日を過ごしています」と話しても、距離がありますし、聞いてもらいにくいのではないかと思います。

では、どうすれば話を聞いてもらえるのでしょうか。考えられる方法のひとつは、すぐ横に「タモリ」さんに居てもらうのです。『笑っていいとも!』の図、そのままですね(笑)。

タモリさんが「休日は昭恵さんと過ごされましたか?」「最近苦労したことは?」と聞くことで、安倍総理はそれに応えるかたちで話し出せる。自ら演説的に話すよりも、テレビのバラエティ番組やメディアからのインタビューに登場して、「タモリ」的な存在に「安倍晋三」という生身の存在を引き出してもらうことで、人間味のある回答ができる。その回答によって共感や親近感を醸成しやすくなるのです。

「巨人の悩み」に話を戻すと、企業が「自分では言えないこと、言いにくいこと」のようなサイドストーリーを語るときに重要なのは、視聴者や読者から信頼されている、フェアなコミュニケーションをする人が「聞き役」を担うことなのです。

実はすでに、企業の取り組みに対して「聞き役」を果たしているテレビ番組があります。テレビ東京の『日経スペシャル カンブリア宮殿』です。規模の大小を問わずに多くの会社が取り上げられていますが、基本的には社長が自社の優れた部分を語る番組なんですよね。

一般消費者からすれば、相手の自説を聞き続けるという、受け容れにくいスタイルのコミュニケーションのはずです。ところが『カンブリア宮殿』は、視聴者が信用している村上龍さんと小池栄子さんという「聞き役」が機能することで、社長は存分に語れ、視聴者も楽しく見られるように成立しています。

わたしたちもコンテンツでブランドを紹介するときには、企業のご担当者さまにヒアリングした内容を基にするのはもちろん、場合によってはクラシコムのスタッフがコンテンツにも登場して、ご担当者さまから実際にお話を聞き出していくようなスタイルを取ることがあります。

まさに談話的なやり取りから、読者へ届けるためのコミュケーションを行うわけです。
ブランド単体で見せるのが難しい「自分から言い出せないけれど、本当は聞いてほしいこと」の「信頼される聞き役」として、メディアが果たせる仕事はまだまだあると思っています。

3.本当を面白く伝える

3つ目のポイントは、本当を面白く伝える、です。

宣伝やマーケティングのお仕事をされている方、あるいはクライアントとお話をしていると、しばしば出くわすシーンがあります。「一般消費者に対して企業がコミュニケーションを取るのは嫌がられる」というふうな前提条件を元にしていたり、あるいは「商品や会社のことをストレートに紹介すると広告っぽくなりすぎるから、それよりも共感できるようなコンテンツであればいいです」とわたしたちを気遣っていただいたりすることです。

ただ、ここで考えなければいけないのは、生活者は本当に商品や企業の話に興味がないのでしょうか? 僕もひとりの生活者に立ち戻ったとき、テレビでは「ユニークな新商品を見つけた!」という話題はしょっちゅう流れますし、商品の工場見学や企画の背景を紹介するような番組もあります。工場見学モノは、僕も好きでよく見ています。

つまり、生活者=読者が嫌いなのは商品や会社の話ではなくて、おそらく「嘘と退屈」が嫌いなのです。リアリティのない話やポジショントーク、それらが面白く語られていないことが嫌なのではないでしょうか。裏を返せば、「本当を面白く伝える」コンテンツをつくっていけば、その内容が商品や会社の紹介であっても、ポジティブに受け取ってもらえる可能性はもっとあるはずです。そのように、わたしたちからクライアントへご提案することも多くあります。

「無印良品」で有名な良品計画さんとのBRAND NOTEを事例に挙げてみます。無印良品の人気商品であるレトルトカレーのお話を伺ったのですが、担当者たちは定番商品のバターチキンカレーを改良するために都内のお店を10軒めぐっただけでなく、本場のインドで1週間に1日9食もカレーを食べ続けてリサーチし、自社の味を研究したそうです。

わたしたちからすれば、レトルトカレーの担当者がまさかインドにまで行って、1日9食カレーを食べ、時にはお腹も壊しながら開発しているとは誰も想像していませんでした。この話をピックアップして制作したコンテンツは、読者からもとても喜ばれました。レトルトカレーであれば「無添加で安全です」という訴求はよく見ますし、それも本当のことで魅力はあるのですが、「面白さ」なら担当者のインド旅に軍配が上がる。だからこそフォーカスしたかたちですね。

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良品計画様とのBRAND NOTEコンテンツより抜粋

もうひとつ、キリンビバレッジさんのブランド「世界のKitchenから」での事例です。
「世界のKitchenから」は、世界中のその土地ならではの家庭料理を取材して、それをヒントに商品づくりをしていくというコンセプトがあります。そこまではCMなどのコミュニケーションで広く伝わっているとは思います。でも、実は教わったレシピを開発担当者が自宅のキッチンで再現してみることで、現地での記憶を呼び覚まし、理想をカタチにするに商品づくりに反映しているというのです。その「自家製にこだわった味」を表現するための熱意には、わたしたちとしても大きな面白さを感じましたし、読者からも好評をいただきました。

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キリンビバレッジ様とのBRAND NOTEコンテンツより抜粋

話を戻しますと、わたしたちを含めた生活者は、商品のことを真正面から語る、あるいはその背景にあるストーリーが嫌いなのではありません。面白くないことやリアリティがないこと、あるいは語り口がブランド側に偏っているのが嫌いなのだと思います。本当を面白く伝えれば、きっと喜んで聞いてもらえるという希望をもって、これからも仕事をしていきたいと考えています。

4.お礼を言われる広告を目指す

最後になる4つ目は、お礼を言われる広告を目指す、です。

わたしたちのような小売事業者にとっては、商品を紹介した上でお買上げいただき、お客さまの帰り際に「ありがとうございました」と伝えたら、「いえいえ、こちらこそありがとうございました」なんて返していただけるのは、よくあるシーンのひとつです。

そこで、広告においても同様のコミュニケーションができるはず、という前提にもとづいてコンテンツをつくっています。BRAND NOTEでつくるコンテンツにはアンケートフォームを設けています。インセンティブがないにもかかわらず毎回平均で200件、良いときで600件ほどのご回答をいただきます。ご回答を拝見すると「知りたかったことがわかって良かった」とか「なんの気なしに選んでいた商品の開発担当者が、自分と通ずるところのある人だと知って安心感を持ちました」とか、そういうコメントを感謝の言葉と共に残してくださる方も多くいます。

適切な紹介と、本当を面白く伝えるコミュニケーションをすることで、広告であっても「ありがとう」と言っていただける可能性は、まだまだあると思っています。ここまではBRAND NOTEで広告の「出稿を受ける側」としての事例を挙げてきましたが、今度はわたしたちがGoogle AdSenseなどのオンライン広告に「出稿する側」の事例を紹介しましょう。

わたしたちがリターゲティング広告で使っているバナーのクリエイティブは、基本的に「北欧、暮らしの道具店」でのコンテンツ更新情報を配信しています。お客さまがわたしたちのサイトに来られる動機の大半が「北欧、暮らしの道具店が提供しているコンテンツが面白そう」ですから、お客さまがわたしたちのサイト外でバナーを目にしたとき、どんな情報を表示すれば「教えてくれてありがとう」と言ってもらえるかを考えると、「今はこんなコンテンツを配信しています」という情報なら喜ばれるのではないかと考えました。

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リターゲティング広告のクリエイティブ例

最初は試行錯誤もして、キャンペーンや商品訴求のクリエイティブで出稿していたこともありましたが、コンテンツ更新情報のクリエイティブに変えたことによって、CTRが4倍になりました。CTRが4倍になると品質の高い広告とみなされるので、クリック単価も大きく下がります。CPAで見てもキャンペーンや商品訴求をしていたときと全く変わりませんでした。単純にCTRが4倍になり、広告の成果も4倍になったという結果です。これもひとつの「ありがとう」と言っていただける広告になったのではないかと思っています。

さて、再びわたしたちが「出稿を受ける側」としての話に戻りますが、クラシコムではBRAND NOTE以外にも「ありがとう」を言っていただける広告を目指して、来年以降に新たな商材のリリースを予定しております。これは、クライアント、お客さま、わたしたちの三方良しになる広告プランになるはずです。ご期待をいただければと思います。

「広告が嫌われる」という議論はさまざまなメディアで目にします。ですが、わたしたちは小売事業者としてお客さまに商品をご紹介し、お買上げいただき、なおかつお礼の言葉をかけてもらるという、これまで培ったコミュニケーションを広告分野においても実現できると信じて、これからも「ありがとう」と言われる広告を提供していきたいと考えています。

ここまで長い時間、お付き合いをいただき、ありがとうございました。クラシコムがECサイトとして、小売事業者として育んできた「商品の購買につながる共感プロセスのつくりかた」について、ペイドメディアとして各ブランドさまへどのようにご提供していくかを、BRAND NOTEの事例にお話させていただきました。何かひとつでも、みなさまのお役に立つ内容があったらと思います。あらためて、ありがとうございました。

登場したBRAND NOTE事例はこちら

【無印良品】第1話:インドで1日9食?「無印良品」のレトルトカレーが生まれる裏側。
【世界のKitchenから】第1話:本当に飲みたいのは「家庭の味」でした。

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