2017.04.25

「一眼カメラで撮る」ことの良さを伝えたい。 Canon EOS M10との年間のお取り組みを通して

書き手 高島 知子
写真 雨田 芳明
「一眼カメラで撮る」ことの良さを伝えたい。 Canon EOS M10との年間のお取り組みを通して
2015年に「北欧、暮らしの道具店」はスポンサードコンテンツ「BRAND NOTE」の取り組みをスタートさせました。 クラシコムのスタッフが、お取り組みする企業の商品をじっくりと知りながら仕立てるオリジナルの記事は、読者のみなさんにも好評です。 クラシコムジャーナルでは、その舞台裏として、お取り組みのきっかけや掲載後の反響など、企業のご担当者さまからお話をお聞きしています。 今回は、ミラーレスカメラ「Canon EOS M10」で年間を通してご一緒した、キヤノンマーケティングジャパンの浅葉森さんにお話を聞きました。聞き手は、クラシコム高山です。|2015年に「北欧、暮らしの道具店」はスポンサードコンテンツ「BRAND NOTE」の取り組みをスタートさせました。 クラシコムのスタッフが、お取り組みする企業の商品をじっくりと知りながら仕立てるオリジナルの記事は、読者のみなさんにも好評です。 クラシコムジャーナルでは、その舞台裏として、お取り組みのきっかけや掲載後の反響など、企業のご担当者さまからお話をお聞きしています。 今回は、ミラーレスカメラ「Canon EOS M10」で年間を通してご一緒した、キヤノンマーケティングジャパンの浅葉森さんにお話を聞きました。聞き手は、クラシコム高山です。

年間の取り組みだからこそ生まれた説得力

――Canon EOS M10(以下、M10)を取り上げたBRAND NOTEでは、どの記事の写真もM10を使って撮影し、2015年の発売直後に1回、さらに2016年には4回にわたっていろいろな切り口からお取り組みさせてもらいました。1回が3話連載なので、振り返るとそれなりのボリュームですね。

浅葉森さん(以下、浅葉) 本当ですね。1回目のお取り組みとなる、インスタグラムをテーマにした記事の反響がとてもよくて、読者の方がそのままキヤノンのECサイトに飛んで商品を購入されたケースが目立っていたんです。丁寧に商品を紹介いただいた結果だと思いました。

何より、「北欧、暮らしの道具店」さんにしっかりファンがついていて、読者の方々がスタッフさんからの情報を安心して受け取っていることが、1回の取り組みでよく分かりました。それが、年間での取り組みの決め手になりましたね。宣伝色を強くしすぎず自然な流れで商品の良さを知ってもらうには、年間でコミュニケーションを取るほうが説得力が出ると思いました。

――年間の最後のお取り組みでは店長佐藤を中心に「一緒に過ごしたからこそ本音で言えること」というテーマで展開しましたよね。 手前味噌ですが、ユーザーとしての目線が色濃く出ていて、すごく実感のこもった記事になりました。

浅葉 そうですよね、ありがたいです。長期のタイアップを通して、やっぱり「北欧、暮らしの道具店」さんとは親和性が高かったと思いました。実際、最後のお取り組みの記事を通して、キヤノン公式オンラインショップでの直接購買が大きく伸びたんです。レンズセットで6万円ほどする商品が今までにないレベルで、メーカーの公式オンラインショップで売れたことは社内でもすごく話題になりました。これまでのコミュニケーションの積み重ねがあったからだと感じましたね。

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「スマホ“で”いい」人に向けたEOS M10

――M10が生まれた背景についておうかがいしたいんですが、そもそもEOSのMシリーズは、キヤノンで初めてのミラーレスカメラなんですよね。

浅葉 大きな流れとして、ほんの10年ほど前は多くの方に日常的に使われていたコンパクトカメラが、現在はスマートフォンのカメラに置き換わっているという現状があります。手軽さではなかなか上回ることは難しいので、大きな一眼レフを持つほどではないけれど、スマホよりはきれいな写真を撮りたいという“エントリーユーザー”に向けて開発したのが、ミラーレスカメラのEOS Mシリーズです。
初代を2012年、続いてM2を発売しました。当時は、一眼レフの本格感には抵抗がある若い人や女性層に向けて考えたんですが、でもフタを開けてみると、すでに一眼レフを持っている人のサブ機としての購入が多かったんですね。そこで、その次に発売したM3は実際の購買層を考慮して、ハイエンドモデルに振りました。

――なるほど、たしかに普段カメラを使わない人からすると、いきなり一眼レフというのは考えにくいのかもしれないですね。

浅葉 ええ。だから、M3は上向きに振ったものの、やはり「初めてカメラを買う」人にリーチしたい意向はありました。そもそも、カメラメーカーとしてエントリーユーザーの市場は開拓していかなければいけないので、それでもっと思い切って女性や若い人を意識してリリースしたのが、M10だったんです。
M10を発売したころには、スマホでの撮影がかなり浸透していました。ただ、スマホは便利ですが、必ずしもみなさん「スマホ“が”いい」と思われているわけではないんですよね。どちらかというと「スマホ“で”いい」という感じなので、そうした人にぜひ一眼レフで撮る写真の良さを知ってもらえたらな、と。
もちろん、今やインスタグラムをはじめSNSへの投稿は無視できないので、M10では最初からWi-Fi接続などを完備して、スマホともスムーズに連携できるようにしました。

“本格的すぎる”イメージを払拭するには?

――カメラを持っていない層、まだリーチできていない層に対してコミュニケーションを取ろうとする中で、意識された点などはありましたか?

浅葉 そうですね、キヤノンユーザーに対してだと男性中心の本格志向になってきてしまうので、一般の方々、特にカメラを所有していない人への調査を行いました。カメラ自体やミラーレスカメラに対する意識、キヤノンのイメージなども聞きました。
すると、キヤノンが最終的に選ばれない理由が2つあったんです。ひとつは、機器自体のボタンの多さやデザインですね。パッと見てかわいくて、自分でも使えそう、と思ってもらえていなかったんです。そこでM10はボタンもかなり減らし、ボディーのカラー展開に加えて「フェイスジャケット」の装着で好みに応えられるようにしました。

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もうひとつの理由は、プロやハイアマチュア向けの開発を続けてきたからこそ、エントリーユーザーの方には「キヤノンのカメラは本格的で難しそう」「自分とは遠い」というブランドイメージができてしまっていたことです。

――キヤノンだからこそのブランド資産がかえってハードルになっていたんですね。それはどのように解決したのでしょうか?

浅葉 あれこれ説明するのを、止めました。止めたというと語弊があるかもしれませんが、初めてカメラを買おうかという人に、正直、何万画素だとかオートフォーカスがどうだとかを主張しすぎてもしょうがないだろう、と。
だから、M10のカタログの文章量もぐっと抑えて、どんな写真が撮れるのかなど、買った後をイメージしてもらえる内容に絞りました。これまででいちばん文字校正がラクでしたね(笑)。そして、カタログの表紙にも「Canon」のロゴを載せなかったんです。

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――それは、すごい決断ですね…!

浅葉 当社としても初めてのことでした。「Canon」の信頼感ではないところで魅力を訴求しようと、これは振り返るとたしかに思い切りましたね。脱キヤノンというか、違う一面を打ち出そうとしたんです。

理想の写真が「北欧、暮らしの道具店」にあった

――コミュニケーションの一環で、写真家の方々ともコラボしたインスタグラムの公式アカウントを運営されていたのも特徴的でした。2015年当時はインスタグラムを活用した商品プロモーションがそこまで広まっていませんでしたよね。

浅葉 そうですね、なので社内でも「販売につながるのか」という議論も多少ありましたが、これも狙いは同じで、やはりカメラは機器自体がほしくて買うのではなく写真を撮りたくて買うものなので、写真を見せることがいちばん直接的に響くだろうと考えました。実際にアカウントを開設して3カ月で2万5000人までフォロワーが伸びましたし、ピーク時で公式オンラインショップでの購入の約2割がインスタグラムを経由していたので、直接の販売にも手応えがありました。

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――僕たちが御社と知り合えたきっかけも、実はインスタグラムでしたね。「北欧、暮らしの道具店」の第一印象はどうでしたか?

浅葉 もう、世界観がM10にぴったりだと思いました。カタログのロケ地もちょうど北欧だったくらいで、我々がどうしてもハイアマチュア層寄りの写真に頭がいってしまう中、ああこういう写真を載せたいなという写真が「北欧、暮らしの道具店」にはたくさん載っていたんです
この媒体のファンの方は、やはりこういう写真を撮りたいだろうなと。そして、それはM10で撮れますよと伝えたらきっと響くだろうと直感しました。
それから、インスタグラムのフォロワー数も魅力的でしたね。元々、その展示会にもM 10アカウントの告知を目的に出展していたので、インスタグラムを絡めたタイアップができるといいなと思いました。

――実際、BRAND NOTEのお取り組み1回目の記事をアップした際は、冒頭でお話ししたように御社オンラインショップでの直接購買にもつながったとのことでしたし、インスタグラムのフォロワーの重複も増えたと聞いてうれしかったです。

浅葉 そうなんです、当時は2割くらいまで重なっていたので、ユーザーを連れてきてくれたという印象が強かったです。やはり世界観が近いんだと、数値からもよく分かりました。

「1枚1枚が大切になる」と丁寧に伝えられた

――その後、年間でお付き合いいただけることになったわけですが、僕たちのコンテンツでは年間で展開しているものは特に、機能面だけでなく情緒面をしっかり喚起していこうという考えがあります。浅葉さんからは、もうちょっとこの機能を強く訴求してほしいといったご要望が良い意味でほとんどなかったので、僕たちとしてはカラーを出しやすかったのですが、そのあたりは意識されていたのでしょうか?

浅葉 そうですね。機能を一方的に押し付けるのはメーカーのエゴだし、特に今回のような初心者向けではあまり意味がないと思っていたので、ミラーレスカメラの良さや写真をちゃんと撮ることの魅力をまず伝えていただきたいなと。なので、機能云々は細かく言わなかったんです。
記事から直接の購買にもつながっていましたが、普通はすぐに買うような価格の商品ではないので、年間を通して情緒的に親しみながらゆっくり検討したり、お店に見に行くなど一歩先へ進んだり、という流れもできていたと思います。

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――ちなみに全部で15話になりましたが、浅葉さんがお気に入りの記事などございますか?

浅葉 そうですね、写真家の鈴木さや香さんに、M10を使っての具体的な撮り方をレクチャーしていただいた記事ですかね。私も登場していて恥ずかしいのですが(笑)。絞りやシャッタースピードを解説するだけだと、単なるテクニック紹介で終わってしまいますが、全体を通して「一眼で撮るとどういう心の変化があるか」「1枚1枚がどう大切になっていくか」といった部分をちゃんと表現していただきました。ある意味、この記事を分解してより丁寧に紹介したのが、年間を通しての企画だったと思います。一眼で撮ってみたいと思ってもらい、さらに撮った後もこんなふうにすれば大丈夫だと背中を押す、いい流れができました。

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――では、M10の今後の戦略や方向性を教えてください。

浅葉 M10は発売して2年目になり、後継機を考えるタイミングになってきますが、今回リーチしたかった初心者の方々は我々が引き続きアプローチしていく方々です。ここを入り口に、何割かの方にはハイアマチュア層へ移行していただきたいので、裾野を広げることは5年後、10年後のキヤノンユーザーを育てることにもつながります。その意味ではM10のようなポジションのカメラはとても重要なので、新しい方々とコミュニケーションを図りながら、今回リーチできた方にはもっと撮影意欲が高まる魅力を打ち出したいと思います。
スマホで撮ること自体は、もう当たり前になっているとは思います。だから、うまく共存していくつもりです。スマホとの使い分けや便利な連携を、我々から提案していきたいですね。

――ありがとうございました!

 

【BRAND NOTE EOS M10編】はタイアップ事例一覧よりご覧いただけます。

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