2017.04.11

新しいことに手をつけるときに「がんばりすぎない」ことを心がけています。

代表取締役社長 青木耕平
新しいことに手をつけるときに「がんばりすぎない」ことを心がけています。

なんだかやる気のなさそうなタイトルで申し訳ないです。

今日書こうと思っているのは僕らが新規事業開発や新しい施策を試すときに心がけている「がんばりすぎない」とはどういう意味なのか、なぜなのかってことです。

そもそも僕は起業するような人間ですし、新しいことを始めるは大好きですし、始めるときは情熱がみなぎってますからがんばりたくて仕方がない精神状態なわけです。

また、新規事業の責任者や新施策の担当を任されたスタッフもおおよそそう言うのが好きそうな人を選んでますから、だいたいがんばりたがる。

でも、ぐっとこらえて、必死で「がんばりすぎない」ようにする必要があるんですね。

それはなぜかと言うといきなり「がんばる」と、今やっていることが「がんばる価値がある」取り組みであるかがわかりにくくなってしまうと思っているからなんです。

そもそも新規事業を任されたり、新施策をまかされる人は優秀だし、馬力もあることが多いです。その人が目一杯頑張って新規事業が軌道に乗ったり、新施策の効果が確認できたとします。そのとき経営者としては選択した「ドメイン」が良かったのか、「優秀な人のがんばり」が功を奏したのかの区別が付きにくくなってしまうんです。

もし後者の「優秀な人のがんばり」が功を奏してとりあえず軌道に乗ってしまった事業や施策だった場合、それを維持向上していくのはとっても大変です。さらにリソースを投入してスケールすることを目指すにしても、希少な人材を投入しなければなりませんし、優秀な人を投入しても「とりあえず」軌道に乗るくらいの成果ですから、正直がんばってスケールさせる価値があるドメインではない可能性も大きい。

こう言う事業や施策からはとっとと手を引いたほうがいい。希少なリソースは伸び代がある分野に配置しないと勿体無い。

一方全然がんばらずにはじめると、時々「えー意外とうまく行っちゃうねー!」「なんでだろう?よくわからないけど売れちゃう!」というようなやってる人たちがちょうどフワッと浮き上がるようなリアションが帰ってくることがあるんです。ほんと10回に1回とかですけどね。

要は投入したコストを上回るリターンが小さくても感じられる瞬間です。

僕はこれをテイクオフのシグナルだと思っていて、パラグライダーがテイクオフするプロセスをイメージしてもらいながら説明しています。

いい風が吹いているタイミングで山の斜面から小走りに駆け下りるとパラシュートが風をはらんで、ライダーの体をフワッと持ち上げ、でもすぐ着地して、また小走りに走るとフワッと持ち上げられて、それを2、3回繰り返していくと、フワーッと大空にテイクオフしていく、そんなイメージです。

新分野に臨むとき、この小さな数秒間の浮揚感のような感覚が感じられるかどうかがとっても重要で、このシグナルってささやかすぎるのでがんばってしまうと気づくのが難しい。ちょうど良い風も吹いていないのに、ライダーの目一杯の走力でとりあえず浮揚しようとするみたいなもんです。風に乗るためには「斜面」を「小走り」するくらいの頑張りで良いんです。それで乗れない風なら乗る価値がない、乗ったら危ない風かもしれないんです。このタイミングでは風を感じることと、どの風に乗るかを正しく選択することが一番大事です。

「がんばりすぎない」のにうまくいくドメインを見つけられたらしめたものです。まさにそこからががんばり時です。「がんばりすぎない」のにうまくいくわけですから、がんばったらめちゃめちゃうまくいきます。そしてわりと普通の人たちをその仕事に当てても十分に成果が出せるのでスケールする可能性もぐっと高くなります。

余談ですが大体が僕を含めていつもいつもずーっと優秀な人なんてほとんど存在してないんです。みんな普通。だから普通の人が普通にがんばっても成果が出ない仕事はきっと課題設定自体に問題があります。

「がんばりすぎない」効用はこうやってがんばる価値のあるドメインを見出せない場合にもいいことがあります。むしろ本当は水面下ではこちらの価値の方が計り知れないと思ってます。

「がんばりすぎない」と大抵の恵まれていないドメインでは上手くいかないんですね。大失敗すると言うよりは何も起きない。悲しいくらいに何も起きない。何も起きてないからリソースも追加してないし、レガシーもほとんどない。なのでがんばる価値のない分野へのリソースの無駄遣いや、撤退戦に長い時間を費やすことを避けることができるのです。

何をするかよりも、何をしないかのほうがはるかに重要だと言うのが僕の基本的なスタンスなのですが、一方である程度はやってみないとがんばってやる価値がある分野であるかがわからない。なので「がんばりすぎない」で広く色々やってみて、「フワッ」という浮遊感が感じられたものにリソースを集めるということの繰り返しをしてるんだと思います。

まあ小さなな事業を中心に、小さな会社を経営する経験からえられたコツのようなものなので、大きな事業を中心に大きな会社をやろうとしている人にはまた別のコツがあるんだと思うのですがw